緑内障と聞くと、”眼圧が高い”と連想するが、高眼圧の緑内障が占める割合は多くない。
眼圧の正常範囲は、”10~21 mmHg”。
正常範囲の眼圧でありながら、視神経が障害される“正常眼圧緑内障”の割合は、70パーセント以上である。(日本国内)

来局されている御婦人も、緑内障と診断されていた。
眼圧は、21mmHg(両眼)・・・たしかに、正常眼圧の範囲内である。
視野欠損の自覚はない・・・しかし、眼科による視野検査では視野障害が検出されていた。
また、“目の奥が痛い”との症状も訴えておられた。

患者さんは、”正常眼圧緑内障”と診断されているが、眼圧下降の目的で点眼薬による治療を受けていた。
「”正常眼圧緑内障”なのに、どうして眼圧を下げるの?」と、思われる方もおられるだろう。
しかし、正常眼圧緑内障の場合でも、眼圧を下げることで緑内障の進行を遅らせる効果があるのである。

一方、漢方の領域では、“正常眼圧”であっても”高眼圧”であっても、治療法は若干異なるが、改善は可能である。
その場合、漢方薬による自律神経の治療を平行することが多い。
緑内障にお悩みの患者さんは、ストレスの感受性が敏感な傾向を有しているからである。
実際、緑内障の患者さんは、精神的緊張による手掌汗(てあせ)、不眠を感じておられる方は少なくないのである。

当薬局は、糸練功(しれんこう)という技術を用いて病態を分析し、適合処方を解析している。
患者さんの異常を漢方的に分類し、異常を消失させる(治す)漢方薬を探索する手法である。
(糸練功の技術的な要項は、「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は、以下のとおりである。

A証) 釣藤散加減方証 (陽証)
B証) 桂枝加竜骨牡蠣湯証 (陽証)
C証) 葛根加朮附湯証 (陰証)

この解析結果は、患者さんの異常が、上記の3種の病態(証)から構成されていることを示している。
従って、釣藤散加減方、桂枝加竜骨牡蠣湯、葛根加朮附湯の3処方の服用によって治療が成立する。

A証) 釣藤散加減方証 (陽証)は、緑内障への適応である。
B証) 桂枝加竜骨牡蠣湯証 (陽証)は、精神的緊張による自律神経の異常であり、緑内障の助長因子である。
C証) 葛根加朮附湯証 (陰証)は、頸椎異常が誘発する自律神経症状の誘発因子である。

早速、漢方薬の服用を開始していただいた。

漢方治療開始から、3ヵ月後・・・
“目の奥の痛み”: 消失
“不眠”: 改善

漢方治療開始から、4ヵ月後・・・
“眼圧”: 左眼(18 mmHg)安定化、 右眼(19 mmHg)安定化

現在・・・
根治に向け、漢方治療を継続中である。