逆流性食道炎・・・胃液が食道へ逆流し、“胸焼け”・“呑酸”などの症状を呈する疾患です。
病院では、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬などが処方され、その有効性は高いです。

また、漢方薬を処方されることも多くなりました。
半夏瀉心湯、安中散、六君子湯、茯苓飲・・・などなど。

ただし、漢方薬を適用する場合、“逆流性食道炎=○○湯”という法則はありません。
逆流性食道炎という病名は、参考のひとつに過ぎません。
漢方的に症状・体質を解析して、“個々の患者さんに適合する漢方薬を識別する”ことが重要です。
ここでは、その一例をご紹介しましょう。

80歳代 女性

3ヶ月前から突然に体力が衰えたご婦人を心配して、ご家族を伴ってのご来談でした。
体力の衰えの原因は、極度の“食欲低下”。

食事の嚥下が困難で、やっと食事をとっても、その後、吐き出してしまうとのこと。
大変しんどいご様子でした・・・声に力が入らず、言葉をはっきりと聞き取れません。

病院では、逆流性食道炎と診断され、H2ブロッカーと制酸薬、そして安中散が処方されました。
しかし、食欲はもどらず・・・。

ご家族を介して、様子を詳しく伺うと・・・。

  • 食事の際に、咳きこむ。
  • 食事をすると、鼻水が大量に流れ出る。
  • 涙と目ヤニが、とても多くなった。
  • 胸のチリチリ(胸焼け)の自覚症状は無い。

とのお答えでした。

当薬局は、糸練功(しれんこう)という技術を用いて病態を分析しています。
個々の患者さんに適合する漢方薬を探索する手法です。
(糸練功の技術的な要項は、専門家向けですが「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

患者さんの消化器(胃)の解析結果は、以下のとおりです。
A証) 茯苓甘草湯加減方証 (陰証)

茯苓甘草湯は、茯苓・桂皮・生姜・甘草の4種で構成される漢方処方です。
“水毒”と、“気の上衝”が目標です。

この処方は逆流性食道炎へ頻繁に適用される処方ではありません。
ですが、糸練功による解析では、患者さんへの適合性は抜群でした。
早速、漢方治療の開始です。

・・・1ヵ月後
“食欲”: 徐々に回復
嚥下が容易になり、食事時の咳・鼻水は著しく減少。
涙・目ヤニも減少。
患者さんの言葉が、はっきり聞き取れるようにもなり、ご家族は“ホッと”一安心。

引き続き、漢方治療を継続中です。