椎間板ヘルニア(眩暈・立ちくらみ)

頚椎椎間板ヘルニア(頚椎ヘルニア)、他の頚椎異常は、漢方薬とは疎遠と思われがちである。
しかし、椎間板ヘルニアへの漢方薬の適用は、良好な治療成績を齎している。

今回は、頚椎椎間板ヘルニアと診断された男性の改善症例を報告する。

整形外科において、男性(40歳代後半)は、第5-6頚椎の変形の指摘を受けていた。

主訴は、頸部の鈍痛である。
また、激しい立ちくらみも発症されていた。

幼少時から色白だったそうだが、2年ほど前より周囲から「顔が赤い(顔面紅潮)」と言われるようになり、たいそう気にされていた。

首の痛みは、頚椎椎間板ヘルニアの際によく現われるが、立ちくらみや顔面紅潮が、頚椎異常と連動しているケースと、著者は幾度か遭遇している。

それは、頚椎変形による椎骨動脈の圧迫(椎骨動脈不全)の関与が疑われる。
だが、その場合でも適合処方さえ誘導できれば、治療は可能である。

漢方医学は、「体表解剖学」である。
頚椎椎間板ヘルニアの患部には、必ず異常な反応は現われている。

頸椎異常は、患者さんのどこ(臓腑・経絡)から起因しているか?
その原因は、いくつあるのか? 一つなのか? 複数なのか?
頸椎を正常化させる漢方薬(適合処方)は何か?

それらを、正確に解析することに漢方治療の意義がある。
その解析方法として、著者は糸練功(しれんこう)という技術を活用する。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

頸椎(第5-6頸椎)の解析結果を以下に記す。

1)第5-6頸椎周辺の反応より

● 葛根湯合R青皮製剤加附子(かっこんとうごうRせいひせいざいかぶし)証(A証)
● N・スクアレン製剤・外用(N・すくあれんせいざい・がいよう)証(B証)
● 麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)証(C証)

以上の3証が、患者さんの頸椎ヘルニアに関与していると理解されたい。
「○○証」と表現しているのは、○○という漢方薬が適合する病態(治療ポイント)である。
つまり、この方の頸椎ヘルニアは、(A)(B)(C)の3処方により、治療できることを意味している。

なお、立ちくらみ・顔面紅潮に関わる、
苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)証(D証)
も存在するが、「(A)(B)(C)の適用で省略できる」ことを確認している。

1ヵ月後
頸部の鈍痛:軽度、立ちくらみ:消失、顔面紅潮:軽度

4ヵ月後
頸部の鈍痛:消失、立ちくらみ:消失、顔面紅潮:消失

現在
漢方治療を継続中


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


考察

上記の頸椎椎間板ヘルニアに関して、漢方の服用開始より 4ヶ月後 には、頚部の鈍痛・立ちくらみ・顔面紅潮は、完全に消失している。

現在、再発の恐れのない「完治」の段階まで服用を継続中である。

本症例は、頚部の鈍痛の他に「立ちくらみ」、「顔面紅潮」を伴っている。
頸椎椎間板ヘルニアと、これらの症状の相関性は研究者によっては肯定され、また、否定もされている。
本症例において、適用した漢方処方は、頚椎治療のみを目的にしている。
しかし、すべての症状(頚部痛・立ちくらみ・顔面紅潮)が改善に至っている。

当初の段階で、「立ちくらみ」、「顔面紅潮」の症状から、「苓桂朮甘湯」を適用候補には入れていた。
現に、患者さん御自身を解析しても、「苓桂朮甘湯証」は確認された。
故に、「苓桂朮甘湯を適用しても 『立ちくらみ』 『顔面紅潮』は治療可能だった」のである。

では、なぜ、苓桂朮甘湯を適用せずに「立ちくらみ」、「顔面紅潮」は消失したのか?
その理由として、「苓桂朮甘湯証としての立ちくらみ、顔面紅潮は、頚椎異常による二次的な症状であった」と考察する。
「本症例の立ちくらみ、顔面紅潮は、あくまで頸椎椎間板ヘルニアによる、椎骨動脈の圧迫を本流とする枝葉の症状に過ぎない」のである。

であるから、いくら枝葉の症状を治しても、大元である頸椎椎間板ヘルニアの治療に着手しないかぎり、完治は困難であると言えよう。

頸椎椎間板ヘルニアの病態は、往々にして複雑化している。
本症例は、糸練功を活用して治療可能となったケースである。

糸練功の有用性が広まり、多くの先生方が活用することを祈念してやまない。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
葛根湯合R青皮製剤加附子散剤+錠剤18,800円
(税別)
N・スクアレン製剤
(外用)
カプセル剤3,600円
(税別)
麻杏薏甘湯散剤9,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります