呑気症(ゲップ・腹痛・食欲減退)

細身の中学二年生の少女。

「激しい腹痛が 数カ月前から頻繁に繰り返す」とのこと。
平素より、食が細く 小さなご飯茶碗の半分くらいで、それ以上は食べられず。

「食後には、ゲップをひっきりなしに出している」

食べ物との因果関係は?
お腹が痛くなった直前は、どんな食事だったかを問うと・・・

「ハンバーグ」である。
カレーライスを食べた後にも腹痛がおきたらしい。

それを聞いて、ピーンときた。
・・・適合処方が頭に浮かんだ。

問診の後、舌を拝見し、愁訴部と大腸の反応穴を糸練功(しれんこう)で解析。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は、以下のとおりである。

● 生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)証

・・・思ったとおりの適応症が、低い合数で見つかった。
生姜瀉心湯は、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)の乾姜(かんきょう)を減らし、生姜(しょうきょう)を加えた薬方である。

本来なら、煎じ薬であるが、粉薬を希望されていた。

そこで、半夏瀉心湯エキスを、市販の練り生姜(5mmほど)を溶かした白湯で服用。

一週間後
お母さんに様子を伺うと、
「あれ以来 腹痛はなくなって、見違えるほど食事の量が増えた」と喜ばれていた。

少女は今も真面目に服用を続けている。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


考察

「ゲップ・腹痛をともなう食欲不振」 への漢方治療の一例です。

少女は、ほんとうに食が細く、少し食べただけで 「ごちそうさま」 だったそうです。
それを聞き、「かなり前から生姜瀉心湯の適応症があった」と、察しました。

ある意味、腹痛が治療の契機となって幸運です。
この適応症は、遅かれ早かれ必ず治さなければなりません。

また、この症状を治すのは容易でした。
問診の際に、大きなヒントを聞けたからです。
そのヒントは、「ハンバーグ」、「カレーライス」、「ゲップ」です。

油っこい食べ物が引き金になっている。
それは、油分を消化する働きが落ちている・・・瀉心湯の適応が浮かびます。

そして、「ゲップ」は・・・生姜(しょうが)。
漢方治療に携わる者なら、「生姜瀉心湯」がピーンと頭に浮かぶのです。

前述のように、当薬局は糸練功という技術を使います。
糸練功は、その薬が実際に効くか否かを識別する技術です。

この場合、生姜瀉心湯の適合が解っていたのに、
「なぜ、生姜瀉心湯を使わずに、半夏瀉心湯エキスを用いたか?」
と不思議に思われる方がおられるでしょう。

それは、少量の練りショウガを溶かした白湯で服用するからです。
そうすることで、生姜瀉心湯と同じ効力になるのです。

本当に漢方はおもしろい!

最後に、とても大切な食養生をお教えしましょう。

もし、油っこい食事で 胸焼けしたり、腹痛・下痢をするようになれば、瀉心湯の適応かも知れません。
瀉心湯証の方は、油物の摂取制限が大切です。

そして、早めに漢方治療をお始めください。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
半夏瀉心湯
(+ 練り生姜))
散薬12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります