卵巣肥大と眩暈(立ちくらみ)

「免疫力を上げる漢方薬はないですか?」 と、深刻な表情で女性(30歳代)は来局された。

長年、カンジダ膣炎(おりものの異常・かゆみ)、 子宮内膜ポリープ、卵巣肥大を患われ、週に一度は婦人科に通院・・・。
毎週、繰り返される洗浄と抗真菌薬の治療に、患者さんは疲労困憊されていた。

また、不正出血、アレルギー性鼻炎、眩暈(立ちくらみ)、頭帽感、動悸、のぼせ、便秘・・・ と、愁訴は非常に多かった。

いずれの症状も漢方治療は可能だが、一番に治したい症状を問うと、 先日、婦人科で指摘された「右の卵巣肥大」と、「眩暈(立ちくらみ)・頭帽感」とのこと。

問診の後、糸練功(しれんこう)にて、以下の反応穴(はんのうけつ)を確認する。
1)女性ホルモン全般の異常: 帯脈穴(たいみゃくけつ)
2)眩暈(立ちくらみ)の反応穴
3)右卵巣部: 腹部より離した状態にて確認

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
帯脈穴・眩暈の反応穴・右卵巣部の反応

-0.2合臓腑病三焦陽証甲字湯加ヨクイニン
0.1合臓腑病小腸陽証苓桂朮甘湯

症状
右卵巣(2倍に肥大)、立ちくらみ(強い)、頭帽感(強い)


3ヵ月後
帯脈穴・眩暈の反応穴・右卵巣部の反応

2.6合臓腑病三焦陽証甲字湯加ヨクイニン
3.1合臓腑病小腸陽証苓桂朮甘湯

症状
右卵巣(正常)、立ちくらみ(消失)、頭帽感(消失)
(婦人科にて)卵巣は正常の大きさ、子宮内膜ポリープも消失

現在も、漢方治療を継続中


結語

経過は非常に順調です。

今では、婦人科への定期的な通院も必要なくなり、精神的負担は軽減しています。
漢方治療を始める以前は、おりもの異常による痒み、経血に塊が混じるなどの症状が顕著でした。
が、1ヶ月ほどで おりものによる痒みは減り、経血の状態も良くなり、改善の兆しを実感されています。

当初の治療目標は、卵巣肥大と、立ちくらみ・頭帽感の改善でした。
○ 卵巣肥大には、甲字湯加ヨクイニン(代用:トウサンカ製剤+ヨクイニン末)
○ 立ちくらみ・頭帽感には、苓桂朮甘湯
を選薬しています。

嬉しいことに、トウサンカ製剤+ヨクイニン末 は卵巣肥大だけでなく、子宮内膜ポリープも改善させています。
経血が改善されたのも、この漢方薬の作用です。

漢方薬は 患者さんに適合して 始めて効果を発揮します。
適合しない漢方薬は効きません。
漢方薬を効かせる絶対条件は、適合性を見抜くプロセスです。

いかに適合性を見極めるか・・・

その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を活用しています。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

糸練功の理論は、木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)が構築され、その技法は 伝統漢方研究会で御教授いただきました。

木下先生はじめ、研究会の先生方へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
苓桂朮甘湯散剤9,000円
(税別)
トウサンカ製剤+ヨクイニン末
(甲字湯加ヨクイニンの代用)
錠剤+散剤9,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります