下肢浮腫(むくみ)を伴う坐骨神経痛

二人の可愛いお子さんを連れて、ご婦人が来局された。
腰に手を当てて歩かれる姿から、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)の程度は軽くない。

学生時代から坐骨神経痛を患われ、寒い時期になると、腰から下肢にかけて痛みが激しくなると申された。

普段から、下肢浮腫(むくみ)にも、お悩みのご様子。
そして、「痛みのないときでも、下半身がだるい」と嘆かれた。

舌を拝見すると、舌の両縁にはっきりとした歯切り痕がある・・・。
胃内停水(水分代謝の滞り)の徴候である。

問診の後、腰の愁訴部(患部)から坐骨神経の走行に沿って、糸練功(しれんこう)にて確認・解析した。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は、以下のとおりである。

● 越婢加苓朮湯(えっぴかりょうじゅつとう)証

が、極めて低い合数で確認された。
「○○証」と表現しているのは、○○という漢方薬に適応する病態(治療ポイント)である。
つまり、この方の坐骨神経痛は、越婢加苓朮湯という処方により根治可能を意味する。

慢性化した坐骨神経痛は、2つ以上の証を呈することが多い。
が、幸いなことに複数ではなかった。

食養生として、甘いものをできるだけ控えるよう伝える。
そして、越婢加朮湯と少量の茯苓末(ぶくりょうまつ)を同時に服用していただく。

1ヵ月後
坐骨神経痛は、下肢浮腫とともに軽快していた。
彼女は、「飲みはじめてから、腰が暖かくなった。足のだるさがなくなった。」
と嬉しそうだった。
合数も順調に上昇している。

13ヵ月後
坐骨神経痛、下肢浮腫は、完全消失。
合数は8合以上に達し、冬になっても痛みを感ずることもない。

もう、漢方治療を終了しても良い時期でもある。
が、ご本人の希望で漢方治療を継続中である。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

坐骨神経痛:ざこつしんけいつう(腰痛)の改善症例です。

二児のお母さんの坐骨神経痛も、今では完治寸前です。

坐骨神経痛の漢方治療の段階で、合数が 5合 を越えた頃には、痛みはほとんど感じません。
実際、本症例では、4ヵ月後には 5合に上昇していました。
人によっては、「治った」と錯覚します。
服用を止めてしまう方も、まれにいます。が、それはよろしくありません。
ほとんどの方が、再発します。

少なくとも、再発リスクの低くなる8合以上になるまで、継続する必要があります。
ここで使用した漢方薬は、越婢加苓朮湯(えっぴかりょうじゅつとう)という薬方(処方)です。
越婢加朮湯に、茯苓(ぶくりょう)という生薬を加えたものです。
茯苓が入っているか否かの違いです。
越婢加朮湯でも、一応の効果はあるでしょう。

しかし、糸練功による確認では、患者さんへの適合性は、越婢加苓朮湯の方がよりシャープだったのです。
それが、越婢加朮湯に少量の茯苓末を足して服用していただいた理由です。
茯苓末を加えるだけで治療期間を短縮できたのです。

患者さんの患部は、強い情報を発しています。
糸練功は、その情報から適合処方を誘導する技術です。

多くの先生に、糸練功の関心が広まることを祈念してやみません。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
越婢加苓朮湯散剤12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります