冷え症と漢方薬

冷え症のタイプ、効く漢方薬も千差万別

今年(平成22年)の記録的な猛暑も峠を越え、しのぎやすくなってきました。

暑がりには嬉しい季節ですが、冷え症の方は気がかりかも知れません。
刻々と、寒い冬に向かっているのです。

これからの季節、「冷え症には○○という漢方薬が良い」などのメディア情報を見かけるようになります。

「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)が、冷えに効く」・・・そんな記事です。

ですが、その情報は鵜呑みにしないでください。
そんな根拠で購入しても、「効きめを実感する人は 2割もいません」

それは、一人ひとりの人間に個性があるように、
「冷え症のタイプも 適合する漢方薬も 千差万別なのです」

とある実例をご紹介しましょう。
ある日、「当帰四逆加呉茱萸生姜湯の煎じ薬が欲しい」と、女性が来局しました。

事情を聞くと、「エキス剤(粉薬)を、5ヶ月飲んでも効かない・・・煎じ薬の方が効きが良いそうだから」 という回答でした。

服用方法、製薬メーカーによっても効き目は変わります。
しかし、服用方法や、製薬メーカーには問題は無さそうでした。

「なぜ・・・当帰四逆加呉茱萸生姜湯を選ぶ理由はなに??」
よくよく聞くと、情報源はテレビの特集でした。

「○○大学の偉い先生が、『冷え症には・・・の漢方薬が効く』と言ってたから」
・・・これは、悲劇です!

メディア情報は、誤って認識しがちです。
彼女は、『冷え性=当帰四逆加呉茱萸生姜湯』 と信じ込んでいたのです。

しかし、漢方薬はメディア情報だけで扱える物ではありません。
一人ひとりの患者さんを、漢方的に分析して適否を判断するものです。

そのため、漢方専門の医療機関では、時間をかけて適合する漢方薬を選びます。
決して、安直に漢方薬を譲渡することはありません。

その旨をお伝えして、後日、御婦人との漢方相談に至りました。

「いつも足が水に浸かっているよう」と、御婦人は症状を表現なさいました。

当薬局は、適合処方の分析に糸練功(しれんこう)という気功技術を応用します。
○その症状は、どの臓腑(ぞうふ)・經絡(けいらく)の異常が原因なのか?
○異常を正常化する漢方薬は何か?

それらを一つひとつ検証し、患者さんの適合漢方を解析します。

ご婦人の下肢を糸練功で分析すると・・・
1)真武湯(しんぶとう)証
2)甲字湯(こうじとう)証
3)四逆散(しぎゃくさん)証
の、3つの証(適応症てきおうしょう)を確認しました。

これは、冷えの治療に 真武湯、甲字湯、四逆散の三処方を要するケースです。

50年来の冷え症は複雑化しており、1つの処方で治せないことを意味しています。

彼女が一番強く感じている症状は、真武湯証。
次に強く感じているのは甲字湯証、その次は四逆散証です。

服用回数の理由から、四逆散による治療は後回しにして、真武湯エキス、甲字湯エキスの服用を開始しました。

そして3日後、ご婦人から連絡がありました。
「真武湯を飲むと、足が温かくなります。今まででこんな感覚はなかった!」
とのこと・・・漢方薬が適合し、長年の冷え症とお別れする予兆です。

あとは続けるだけで、自然治癒力によって御自身の体が自己修復していきます。

「最初から、相談してれば良かった」
と、ご婦人は冷え症の改善を自覚しつつ、日々、漢方薬を服用中です。

漢方薬は、闇雲に選んでも効きません。

メディア情報は、決して鵜呑みにしないでください。