声がれ(嗄声)の改善症例

風邪をこじらせた後、「声がれ」が治らないと御婦人は困り果てていた。

「まるで、のどに膜がはりついた感じで・・・それがとれなくて・・・」
ひどい時は 二週間、まったく声が出せない状態が続いたそうである。

発症は、のどの痛みから始まり、その翌日から声がでなくなる。
内科にて トランサミン(抗プラスミン薬)、ムコダイン(去痰薬)、コルドリン(咳止め)が処方される。

その後、耳鼻科にて トランサミン、ビソルボン(去痰薬)の処方。
その後、14日目より少しずつ発声ができるようになったそうである。
しかし、声枯れは治ってくれず・・・。

近場の薬局で 「麦門冬湯(ばくもんどうとう)エキス」を勧められ、 継続して服用する。
だが、声はかすれたままだと云う。

少しの会話で、声が出なくなる。

病院を変えて検査をしてもらうが、 「異常なし」と診断される。
憔悴しきったご様子である。

舌を拝見すると、薄い白苔、舌の淵に微かな歯切り痕が認められた。

糸練功(しれんこう)にて、天宗(てんそう:呼吸器系の反応穴)と、のどの愁訴部を解析する。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は・・・

● 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)証
● 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)証

以上の2証が、確認された。
「○○証」との表現は、○○という漢方薬に適応する病態(治療ポイント)である。
つまり、この方の声枯れは、上記2処方により根治可能を意味する。

幸いなことに、発症から2ヶ月ほどの経過であったため、經絡病(慢性化していない)の状態だった。
小青竜湯エキス、半夏厚朴湯エキスの服用時刻を設定し、同日より服用開始。

1週間後
患者さんの表情は、明るかった。
「声が出るようになりました。のどに膜が貼った感じも減っている。」

糸練功で確認すると、2証の合数は ともに改善している。
「この際、再発しないようにきちんと治したいのです。」と、患者さん。

2ヵ月後
声枯れ:完全消失
のどの違和感も完全に消失した。

漢方治療を終了する。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

感冒後の発声障害への漢方治療による一例です。

この症状は「嗄声(させい)」といわれます。
所謂「しわがれ声」です。

声枯れの原因は、急性・慢性咽頭炎、声帯ポリープ、咽頭がん、反回神経麻痺など様々です。

しかし、このケースは耳鼻科で検査をしても「異常なし」とのこと。
異常がないのに声が出ない、のどに異物感がある。
という相談は、漢方薬局ではよくあります。

その多くは、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」の適応なのですが、そうとは限りません。
柴朴湯(さいぼくとう)、響声破笛丸(きょうせいはてきがん)、麦門冬湯(ばくもんどうとう) etc・・・。
考えられる漢方薬は多いのです。

当薬局は、糸練功(しれんこう)という技術を使って症状を解析します。

そして実際に、患者さんの咽喉や呼吸器から、
1)小青竜湯によって正常化する波長(小青竜湯証)
2)半夏厚朴湯によって正常化する波長(半夏厚朴湯証)
を誘導しました。

小青竜湯証は、風邪が原因の咽頭炎による病態。
半夏厚朴湯証は、精神的ストレス由来の心の疲れによる病態。

故に、この症状は「その二つの要因が合わさった声枯れ」と推察されます。
半夏厚朴湯だけでは、「半分治って まだ症状が残っている」という中途半端な結果になっていたはずです。

糸練功は、画期的な技術です。
1.治療すべき異常がいくつあるのか?(合数の探索)
2.異常を正常化させる漢方処方はなにか?(合数の解析)
それらを、服薬する前に識別する技術です。

すなわち、「服薬前に、治し方を知る」ことに他なりません。

漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くこと。
適合しない漢方薬は、何の効きめもありません。

適合性の見極め・・・
糸練功(しれんこう)を活用すれば、それが可能になります。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
小青竜湯散薬9,000円
(税別)
半夏厚朴湯散薬9,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります