いぼ痔(痔核)の出血と痛み 60歳代 女性

平成18年1月 初来局。

1年前より、いぼ痔(痔核)による肛門の痛みを感じ、排便時の出血も顕著となる。

歩行の動作により痛みは憎悪し、夕方には立っていることすら辛いと、御婦人は申された。

痔の激痛に耐えながらの夕食支度は、彼女にとっては辛い日課である。

肛門科にて、内服薬と外用薬の処方を受けているが症状は改善されず、漢方治療を依頼された。

「少しでも痛みが治まって、せめて散歩ができるようになれば・・・」
との悲痛な御要望だった。

一連の問診の後、痔の反応穴(はんのうけつ)を 糸練功(しれんこう)にて確認・分析する。

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
痔の反応穴

1.4合臓腑病心包陽証乙字湯加甘草

症状
排便痛(強い)、肛門出血(多い)、歩行時の肛門痛(強い)

夕刻に肛門痛が激しく、起立は困難


1ヵ月後
痔の反応穴

2.5合臓腑病心包陽証乙字湯加甘草

症状
排便痛(軽度)、肛門出血(軽度)、歩行時の肛門痛(消失)

歩行時の痛みは消失し、散歩が可能となる


5ヵ月後
痔の反応穴

7.6合臓腑病心包陽証乙字湯加甘草

症状
排便痛(消失)、肛門出血(消失)、歩行時の肛門痛(消失)

排便痛・出血・肛門痛 すべての症状は、4ヵ月後に完全消失

その後、自ら漢方治療を終了した模様


結語

漢方薬による いぼ痔(痔核)への治療例です。

痔核の発症より 1年後からの漢方治療の開始です。
お病気は、発症から年月を重ねるにつれて複雑化し、2種類以上の漢方薬で対応する場合がほとんどです。

ですので、本症例のように 1つの漢方薬で対応できたのは幸運なケースです。

さて、患者さんの いぼ痔(痔核)による痛み・痔出血には、「乙字湯加甘草(おつじとうかかんぞう)」という 漢方薬が著効しています。

一見、簡単な漢方治療と感じるやも知れません・・・。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。

通常の医療現場では、効きそうな薬を 一定期間患者さんに服用してもらって効けば OK!
効かなかったら、別の候補薬を選びますね。

これが、漢方治療ではもっと複雑になります。
なぜなら、漢方薬は 患者さんに適合させて効かせます。
適合しない漢方薬は、全く効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。

どのように適合性を見極めるか・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。
(糸練功に関しては、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

いぼ痔(痔核)のケースでは、一定のツボ(腰椎下部)に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析する技術が糸練功です。

服薬以前に、薬の適・不適を識別する方法です。
患者さんの臓腑・經絡の状態を分析し、薬の検体を生体へ近づけて、異常磁場の変化を確認しつつ適合処方を探します。
(この方法は、時間と手間がかかります。ですから完全予約制です)

そして、
乙字湯加甘草(おつじとうかかんぞう)証
の、結果を割り出しました。

・・・証(しょう)とは、・・・の漢方薬が適応することを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気を意味します。

つまり、相談の過程で「患者さんの症状は、乙字湯加甘草で治せる確証」を把握したことになります。

この検証方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効性が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代を省けるのです。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
患者さんの自然治癒力がめざめ、自己修復が始まります。

現実に、患者さんが治っている事実は 漢方薬の適合性を証明しています。

「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術なのです。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
乙字湯加甘草煎じ薬+散剤15,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります