激しい排便痛を伴う痔核・脱肛

Aさん(70歳代後半)は、15年前に帯状疱疹(たいじょうほうしん)の漢方治療を依頼されて以来、 困ったときには頼ってくださる紳士である。

今回は、痔の激痛(痔核・脱肛)に、耐えかねてのご相談。

平素から便秘がちな体質で、昨年の冬より肛門が痛みだす。
便意を感じると、痛みが憎悪し、排便時には肛門に耐え難い痛みが走る。
Aさんは、排便痛を「脳天を貫くような痛み」と表現された。

排便後には、肛門から突出した赤黒く膨張した痔核を押し戻さなければならない。
肛門出血も、多々あり。

市販の軟膏(ボラ○ノー○)は全く効かず・・・。
紫雲膏(しうんこう)を塗ると、しばらく痛みは軽減される。

最ものお困りは、排便痛である。
「食べれば排便しなければならない・・・」
辛い排便を避けようと、食欲は著しく減退していた。

舌証は、乾燥傾向。
舌下静脈は暗赤色に怒張・・・瘀血(血滞)の兆候である。

痔核・脱肛の反応は、仙骨上部に現れる(反応穴:はんのうけつ)。
その反応を、糸練功(しれんこう)にて解析し、適合処方を誘導した。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は、以下のとおりである。

● 補中益気湯合乙字湯(ほちゅうえっきとうごうおつじとう)証
● トウサンカ製剤(とうさんかせいざい)証

2つの証が、極めて低い合数で確認された。
「○○証」の表現は、○○という漢方処方で治療が成立する病態を意味する。

そして、極めて低い合数にある証とは、症状は激しく痛みも強烈である。
Aさん自覚される痛みは、想像以上にお辛いはずである。

早速、2種の漢方薬を調剤、服用時刻を決めて服用開始。

1ヵ月後
痔核は縮小し、排便痛も軽快。
「脳天を貫くような 激しい痛みはもうありません」 と、Aさんはお喜びだった。

献身的にAさんを介抱している奥様は申された。
「あんなに赤くて大きかったコブ(痔核)が小さくなって、色も薄くなって・・・」

2ヵ月後
痔核はさらに縮小。

痛みは、更にやわらいでおられるとのこと。
「食欲がでてきて、おいしく食事ができてます」とのご報告。

現在も、漢方治療を継続中。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


考察

「内痔核の悪化による脱肛」 の漢方治療例です。

Aさんの症状は、痔核(いわゆるイボ痔)です。
歯状線の内側に発生した内痔核です。
通常、内痔核は痛みを感じません。
しかし、内痔核の脱出を繰り返し(脱肛)、「内外痔核」という状態へ悪化していたのです。

進行度は、第3度:排便によって飛び出した痔核を自分で押し込んで戻す状態
後の確認では、第4度:脱肛を戻すことができない状態でした。
この状態になると、薬による治療が難しく、手術をすすめられる段階です。

しかし、漢方の世界では適合処方がわかれば、治せるお病気です。
ただし、患者さんに時間をかけて漢方的解析をしなければなりません。
適合処方は、患者さん一人ひとりが異なるのです。

「Aさんの適合処方はなにか?」
・・・その見極めが漢方治療の命です。

「患者さんと、漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
補中益気湯合乙字湯散薬18,000円
(税別)
トウサンカ製剤錠剤6,500円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります