眩暈(めまい)と嘔吐を伴う頭痛
70歳代、女性。
平成20年10月 初来局。
20年前から、ご婦人は 眩暈(めまい)を発症されていた。
回転性眩暈(めまい)ではないが、激しい頭痛と嘔吐を伴う眩暈である。
患者さんは、平素より冷え症で、そして気圧の変動に敏感だった。
ことに雨天の前日は、体調が乱れ眩暈も激化する。
台風など通過しようものなら、その前後は寝込んでしまうと申された。
頭痛は、後頭部・眼の奥に出現し、激しい吐き気・嘔吐にみまわれる。
病院でMRI等の検査をしていただくが、診断結果は「異常なし」。
困り果て、藁をもすがる思いで 当薬局へ漢方治療を依頼された。
一連の問診の後に、眩暈の反応穴(はんのうけつ)と、頭痛の愁訴部を 糸練功(しれんこう)にて確認・分析する。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)
糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します
治療経過
0ヵ月後
眩暈(めまい)、頭痛の反応
-0.6合 | 臓腑病 | 心 | 陰証 | 呉茱萸湯 |
1.0合 | 臓腑病 | 脾 | 陰証 | 人参湯合R青皮製剤 |
症状
眩暈(激しい)、頭痛(激しい)、吐き気(強い)、嘔吐(強い)
眩暈・頭痛により、嘔吐が頻発する
7ヵ月後
眩暈(めまい)、頭痛の反応
5.4合 | 臓腑病 | 心 | 陰証 | 呉茱萸湯 |
6.6合 | 臓腑病 | 脾 | 陰証 | 人参湯合R青皮製剤 |
症状
眩暈(消失)、頭痛(消失)、吐き気(消失)、嘔吐(消失)
眩暈・頭痛・嘔吐、すべてが消失
現在も、漢方治療を継続中
結語
当初の眩暈(めまい)・頭痛は、極めて激しく、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)証の合数は 「-0.6合」でした。
「-0.6合の呉茱萸湯証」の状態は、片頭痛(頭はズキズキ痛む)、胃がムカムカ、そして嘔吐する。
立っていられないほどの眩暈・・・。
そういう症状と察せられます。
たとえれば、一日中 乗り物酔いの状態です。
電車に乗ろうものなら、眩暈は増幅します。
御来談の際には、かなりの御覚悟をされたと存じます。
糸練功の指標である「合数」より、患者さんの状態は察せられるのです。
そのご努力の成果もあり、治療経過はすこぶる順調です。
1ヵ月後には、眩暈(めまい)・頭痛は軽快し、嘔吐の頻度も減少しています。
3ヵ月後には、眩暈(めまい)・頭痛は、ほとんど消失。
日常生活に支障のないまでに回復されておられます。
さて、20年も御婦人を悩ませた 眩暈(めまい)・頭痛には、「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」と、「人参湯合R青皮製剤(にんじんとうごうRせいひせいざい)」という 2つの漢方薬が著効しています。
一見、簡単な漢方治療と感じる方もおられるでしょう・・・。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。
通常の医療現場では、効きそうな薬を実際に服用してもらって、効けば OK!
効かなかったら、他の候補薬を選びますね。
これが、漢方治療ではもっと複雑になります。
なぜなら、漢方薬は 患者さんに適合させて効かせます。
適合しなければ、効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。
どのように適合性を見極めるか・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。
眩暈(めまい)・頭痛のケースでは、患部や一定のツボ(反応穴)に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析する技術が糸練功です。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)
薬を服用する前に、薬の適・不適を識別する方法です。
病態の解析後、漢方薬の検体を近づけて、患者さんの磁場の変化を確認します。
(この方法は、手間と時間を要しますので、「予約制」です)
そして、
1.呉茱萸湯(ごしゅゆとう)証
2.人参湯合R青皮製剤(にんじんとうごうRせいひせいざい)証
という、適合処方を割り出しました。
xxx証(しょう)とは、xxxの漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
xxxの漢方薬で治せるお病気を意味します。
つまり、相談の過程で「患者さんの眩暈と頭痛は、呉茱萸湯、人参湯合R青皮製剤で治せる確証」が得られたことになります。
この方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な漢方薬が察知できます。
無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代が省けます。
適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力がめざめ、患者さんご自身の細胞が、自分自身を治します。
現実に、患者さんが治っている事実は、漢方薬が適合している証明です。
「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、そのための技術です。
糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。
必要となった漢方薬の料金
漢方薬 | 漢方薬の種類 | 料金(30日分) |
呉茱萸湯 | 散剤 | 11,000円 (税別) |
人参湯合R青皮製剤 | 散剤 | 19,200円 (税別) |
※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります
漢方治療の前に
専門医の診断は、必ず受けてください。
頭痛の多くは、生命への危険はありませんが、クモ膜下出血、髄膜炎、脳出血、脳腫瘍、硬膜下血腫などを原因とする頭痛は、緊急を要します。