慢性中耳炎(鼓膜穿孔・耳漏)

心配そうな母親の傍らで、あっけらかんと少女が微笑んでいた。

「中耳炎」が長期化し、少女は耳鼻科に通院していた。
抗生物質による治療を受けてはいるが、臭気の強い耳漏(耳だれ)が止まらない。
医師から「鼓膜の穴(鼓膜穿孔)が、なかなか塞がらないね」と告げられ、母親は大変動揺されていた。

少女は8歳。
アレルギー性鼻炎の既往症を悪化させ、何度も中耳炎を再発させていた。
度重なる中耳炎の再発で、少女の鼓膜は自然再生の及ばない状態だった。

幸いにして、耳痛はなく、聴力低下は微か(ほぼ正常な状態だそう)である。

一連の問診の後、糸練功(しれんこう)を応用し、耳とアレルギー性鼻炎の反応を確認し、適合処方を解析した。

その解析結果は、
1)中耳炎由来の反応
●黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)証・・・(A証)
●F曲参製剤(えふきょくじんせいざい)証・・・(B証)

2)アレルギー性鼻炎由来の反応
●小青竜湯加石膏(しょうせいりゅうとうかせっこう)証・・・(C証)

の 3証が治療を要する低い合数で確認された。

「○○証」と表現しているのは、○○という漢方藥に適応する治療ポイントである。
つまり、少女の慢性中耳炎は、A証、B証の漢方薬と、アレルギー性鼻炎の漢方薬(C証)により、治療が成立することを意味する。

1ヵ月後
アレルギー性鼻炎は治まっている。
臭気のある耳漏(耳だれ)も止まり、鼓膜の再生が始まる(鼓膜の穴が縮小する)。

2ヵ月後
鼻炎症状は消失したまま。
耳漏(耳だれ)もなく、鼓膜穿孔は消失(鼓膜の穴は完全に塞がる)していると耳鼻科で診断される。
少女の母親に笑顔が戻っていた。

6ヵ月後
完全治癒(治療を終了する)。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

「慢性中耳炎(耳漏・鼓膜穿孔)」の漢方治療による改善症例です。

一般的に、中耳炎というと「耳の痛み」を連想しますが、本症例は「慢性中耳炎」です。

急性中耳炎では、膿が中耳の内圧を上昇させて強い痛み(耳痛)を引き起こしますが、すでに鼓膜が破れている(鼓膜穿孔)ので少女は耳の痛みを感じません。

この破れた鼓膜から出てくる膿が「耳漏(耳だれ)」です。

通常では鼓膜に開いた穴は、炎症が治まると自然に修復されて閉じるのですが、幾度も炎症を繰り返したために鼓膜に穴が開いたまま・・・。
この状態が慢性中耳炎です。
耳痛は感じませんが、鼓膜穿孔を長期に放置すると、難治性の難聴に陥ることがあります。
お母様の心中は、穏やかではありません。

この場合、治療対象は耳の症状だけではありません。
中耳炎は、風邪や鼻炎症状が引き金になります。

故に、既往症であるアレルギー性鼻炎も、同時治療を要します。

すなわち、少女の症状は
「黄耆建中湯」 で治せる中耳炎の適応症・・・(A証)
「F曲参製剤」 で治せる中耳炎の適応症・・・(B証)
「小青竜湯加石膏」 で治せるアレルギー性鼻炎の適応症・・・(C証)
の「3つのすべてを治療対象として、完治できる」ことを意味しています。

糸練功は、とても画期的な技術です。
1.治療すべき異常がいくつあるのか?(合数の探索)
2.病態を正常化させる漢方処方はなにか?(合数の解析)
それらを解析して、適合処方(治療法)を、相談の段階で識別します。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

すなわち、服薬前に「すでに治し方を知っている」ことに他なりません。

漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことです。
適合しない漢方薬は、何の効きめもありません。

一人でも多くの先生が、糸練功を活用することを祈念してやみません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(8歳:30日分)
黄耆建中湯散薬9,000円
(税別)
F曲参製剤散薬9,000円
(税別)
小青竜湯加石膏散薬6,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります