不整脈と心房細動

30年以上前から、御婦人は不整脈をかかえておられた。

30歳代より、動悸を頻繁に感じ始め、その脈は飛んでいた。

病院では 高血圧症、心房細動と診断された。
アムロジンD錠、ジゴシン錠、ワーファリン錠の処方を受けている。

相談時の症状は、
○ 歩くと、動悸が激しくなり、胸が苦しく、息切れがする。
○ 安静にしていても、突然 胸がドキドキして脈が結滞する。(不整脈)
○ 症状がひどくなるので、小走りすら何年もしていない。

彼女は 漢方薬に詳しいドクターより数年にわたって漢方治療も受けていた。
そのドクターが他界されたため、知人の紹介で当薬局へご来談された。

最後に処方された漢方薬は「栝樓薤白半夏等(かろうがいはくはんげとう)」。
この処方は、少し良いような感じがした・・・。
しかし、動悸、不整脈がおきない日はないと言う。

問診の後、肩甲骨間の心臓の反応穴を、糸練功(しれんこう)にて解析。

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果を以下に記す。

● 炙甘草湯(しゃかんぞうとう)証
● 増損木防已湯(ぞうそんもくぼういとう)証→代用処方として「回春仙」

2つの証が、極めて低い合数で確認された。
しかし、著者は腑に落ちなかった。
炙甘草湯は、漢方の知識があれば簡単に思いつくファーストチョイスである。

患者さんに問うと、「もちろん炙甘草湯、木防已湯は飲んだことがある」と言う。
ドクターの処方で、改善しててもいいはずである・・・。

念のため、もう一度 糸練功で確認すると・・・
● 炙甘草湯が手のひらに触れると正常化する病態(炙甘草湯証)
● 増損木防已湯が触れると正常化する病態(増損木防已湯証)
この2証は、確実に患者さんに存在していた。

「効かないはずはない!」 と、確証は高まった。
早速、各々の2種の服用時刻を決めて、服用開始。

一ヵ月後
「不思議ですね・・・動悸も、不整脈も、胸苦しさも楽になってます。」
と、嬉しい報告。

そして現在は、10メートル程の小走りは、できるようになっている。

現在も、漢方治療を継続中


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方の考察

「心房細動と診断された不整脈」 への漢方治療の一例です。

後に判ったことですが、
「炙甘草湯と、木防已湯の治療は同時進行ではなかった」そうです。

この場合、炙甘草湯証(A証)と、増損木防已湯証(B証)は非常に低い合数に存在していました。
言い換えると、患者さんご自身は A証と B証の2つを強く感じている状態です。
ですから、炙甘草湯だけの治療では A証は治るけど、B証は治らない。
(B証を強く感じているので、A証が治っていることに気づかない)

そのことが、「『炙甘草湯が効かない』 と、ドクターに判断させた」 → 炙甘草湯を途中で止めてしまった。
そういう経緯があるように思えます。

そうです・・・。
この不整脈はA証と、B証を同時進行で治療しないと、効果がハッキリ判りません。
加えて、経年経過した疾患は、「複数の病態が存在している」ことが多いのです。
そのことは、「2処方以上の漢方薬が必要である」ことを意味します。

なぜ、長年の不整脈は治っているのでしょう??
それは、「治療を要する病態(証)を見逃さなかったから」です。

一人でも多くの先生方が、糸練功を活用することを祈念してやみません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
炙甘草湯煎じ薬15,000円
(税別)
増損木防已湯
(代用処方)
錠剤9,500円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります