(不眠症を伴う)慢性頭痛
60歳代、女性。
平成21年3月 初来局。
30歳の頃より、ご婦人は慢性頭痛をかかえておられる。
頭痛は、頭頂部付近の痛みが特徴である。
ご婦人は、うつ病の既往症がおありである。
「また、うつ病が再発したんじゃないか・・・食欲が全然ない・・・」
御自身の症状を、メモ用紙にこと細かく書き綴り・・・
病気の宝庫の如く、口頭でもその症状を細かく述べられていた。
「今、一番お辛い症状は?」と問うと、
「一番は頭のてっぺんが熱くて痛いこと・・・」
「それから、眠れないことと、食欲がないこと・・・」 と申された。
ひととおり症状を伺った後、愁訴部(頭頂部)と、自律神経の反応穴(はんのうけつ)を 糸練功(しれんこう)にて確認し、適合処方を解析した。
糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します
治療経過
0ヵ月後
頭痛・自律神経の反応穴
-0.7合 | 臓腑病 | 心 | 陽証 | 半夏白朮天麻湯加減方 |
-0.2合 | 臓腑病 | 胆 | 陽証 | 加味逍遙散 |
症状
頭痛(激しい)、不眠(強い)、食欲不振(強い)
頭頂部が熱く痛み、食欲がなく、寝つきが悪い
1ヵ月後
頭痛・自律神経の反応穴
0.3合 | 臓腑病 | 心 | 陽証 | 半夏白朮天麻湯加減方 |
0.5合 | 臓腑病 | 胆 | 陽証 | 加味逍遙散 |
症状
頭痛(軽度)、不眠(軽度)、食欲不振(軽度)
頭頂部の熱感が消失し、頭痛も軽度、食欲がわき、寝つきも良好
3ヵ月後
頭痛・自律神経の反応穴
2.5合 | 臓腑病 | 心 | 陽証 | 半夏白朮天麻湯加減方 |
3.6合 | 臓腑病 | 胆 | 陽証 | 加味逍遙散 |
症状
頭痛(消失)、不眠(消失)、食欲不振(消失)
頭痛、寝つき、食欲はともに良好
13ヵ月後、漢方治療を終了する
結語
当初は、頭痛が激しく、ことにイライラ感・焦燥感が強く伝わりました。
御婦人の口癖は「ツライ、辛い・・・うつ病じゃないか」 と、ご自分や周囲を否定する文言が多いのが特徴的でした。
ご親族間での摩擦が要因とも感じられ、
「こんなにしてあげているのに・・・なぜ・・・」
と、周囲が自分の思い通りにならないことが、大きなストレスになっていたようです。
近年、同様なストレスをかかえる患者さんに接する機会は多いです。
しかし、よく考えてみてください。
「人を自分の思い通りにするなんて無理です」
「むしろ、自分が過剰に反応しなくなるようにすれば?」
そういう趣旨の助言をしたら、彼女は何か吹っ切れた様でした。
そして1ヵ月後、頭頂部の合数は、1合以下で痛むはずなのですが、20年来の頭痛が軽くなっていることを素直に喜んでくださり、笑顔の来局でした。
3ヵ月後には日常生活には支障がないまでの改善でした。
が、完全治癒に至る13ヶ月間、御婦人はまじめに服用されました。
さて、この治療経過を見る限り「簡単な漢方治療」と思うやも知れません。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。
漢方薬は 患者さんに合わせて効かせるものです。
適合しない漢方薬は、全く効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。
適合性の見極め方・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。
頭痛の場合、痛みを発している患部に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析し、適合処方を知る技術が糸練功です。
薬を服用しないで 薬の適・不適を識別する方法です。
患者さんの臓腑・經絡の状態を分析し、薬の検体を生体へ近づけて、異常磁場の変化を観察します。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)
そして、
1.半夏白朮天麻湯加減方(はんげびゃくじゅつてんまとうかげんほう)証
2.加味逍遙散(かみしょうようさん)証
の、解を得たのです。
・・・証(しょう)とは、
・・・の漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気を意味します。
つまり、相談の過程で「半夏白朮天麻湯加減方 と 加味逍遙散で治せる確証」を把握したわけです。
この方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な漢方薬が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代を省けるのです。
適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力が目覚め、患者さんご自身の細胞が自己修復を始めます。
現実に、患者さんが治っている事実は、漢方薬の適合性の証でもあります。
「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。
糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。
必要となった漢方薬の料金
漢方薬 | 漢方薬の種類 | 料金(30日分) |
半夏白朮天麻湯加減方 | 煎じ薬+散薬 | 15,000円(税別) |
加味逍遙散 | 散薬 | 11,000円(税別) |
※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります