不正出血と不眠症

40歳代、女性。

二十歳代より、当薬局へ通われているご婦人です。

月経不順のため、「温経湯(うんけいとう)」による治療にて良好な経過でした。

しかしある日、「不正出血が止まらない!」との連絡がありました。

「おかしいな・・・何かやった?」と問うと、
テレビCMの影響で、ダイエットを目的に「ナイ●トール(漢方製剤:防風通聖散料)」を、しばらく服用したそうです。

その後、体調を崩し、出血が止まらなくなったとのこと。
ふくよかな女性ですが、「ナイ●トール」が適用する方とは思えません。

漢方だからと、安易な服用は禁物です。

「ダイエット=防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)」という方程式など存在しないのです。

患者さんは、もともと月経不順で基礎体温はバラバラ・・・。
高温期・低温期の識別すらできません。

パニック障害の既往もあり、不眠のためデパスが病院から処方されています。

この場合、女性ホルモンの反応が現れる 帯脈(たいみゃく)というツボを念入りに、糸練功(しれんこう)で確認し、適合する漢方薬を解析します。

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
帯脈穴の反応

-0.3合臓腑病陽証柴胡加竜骨牡蠣湯
1.2合臓腑病陽証温経湯

症状
不正出血(あり:14日間続く)、不眠(あり:デパス処方)


1ヵ月後
帯脈穴の反応

0.7合臓腑病陽証柴胡加竜骨牡蠣湯
1.9合臓腑病陽証温経湯

症状
不正出血(なし:服用開始後すぐに止まる)、不眠(なし:デパスは不要)

現在も、漢方治療を継続中


結語

不正出血には、温経湯(うんけいとう)や田七人參などの適合が多いものです。

「温経湯による治療中で、温経湯証が改善しているにも関わらず、不正出血が出現する」
ということは、
「温経湯も必要だけど、他の適応症も存在している」可能性を示唆しています。

そして、糸練功で解析された適合処方は、「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」。
この処方は、自律神経失調症や不眠症など、心のバランスが乱れたケースの適応です。
決して不正出血に汎用される漢方薬ではありません。

しかし、このケースの不正出血には「柴胡加竜骨牡蠣湯証」が強く関与していました。

糸練功という技術がなかったら、このケースの病態を見抜くことは非常に難しい。

糸練功の理論を構築し、御教授いただいた木下順一朗先生へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
柴胡加竜骨牡蠣湯散剤12,000円
(税別)
温経湯散剤10,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります