10年以上続いた胆砂と胆嚢炎
胆汁(たんじゅう)は、食物中の油(脂肪)を分解する消化液で、肝臓で作られます。
胆汁は、胆嚢(たんのう)内で濃縮されているのですが、固形化する(結石になる)ことがあります。
胆嚢内にできる胆嚢結石の頻度が多く、その形状から、胆泥(泥状)、胆砂(砂状)、胆石(石状)といわれます。
症状としては、胆嚢の位置する右季肋部痛や、背部痛(右肩甲骨下)などが多いのですが、中には無症状の方もおられます。
また、結石による胆汁の停滞のために、細菌感染を生じ、苦痛を伴う胆嚢炎を併発する方もおられます。
今回は、11年にわたる胆砂と胆嚢炎を克服された患者さんの改善症例を報告いたします。
背中の痛みに耐えながら、患者さんは他県から来局されました。
11年前、激しい腹痛に襲われ救急車で病院へ搬送されると胆砂が見つかったそうです。
〝ウルソ〟が処方され、継続して服用されましたが、胆嚢炎を併発し右季肋部痛、右肩甲骨下の痛みが激化。
1ヶ月の間に20日は、腹痛と背部痛に大変苦しまれたそうです。
諸事情のために手術はせずに、漢方外来のある病院へ転院しましたが、その後は通院されていないとのこと・・・。
便秘の傾向あり、胸焼け、ゲップ、悪心も訴えられています。
顔色は優れず、背部痛のために背筋を伸ばせない状態でした。
〝他にも良い病院があるはずなのに・・・〟なぜ、こんな状態になるまで通院を拒むのか?
患者さんは、胆嚢炎を併発しているのです。
〝現代医学と東洋医学の並行〟の大切さを伝え、適合処方の解析に移りました。
胆砂と胆嚢炎の漢方的解析
当薬局は、〝糸練功(しれんこう)〟という技術を活用して適合処方を解析しています。
身体は異常が生じると(病気に罹ると)、体表にも〝病態〟が現れます。
その〝病態〟を、陰陽・臓腑に解析して、適合する薬〝適合処方〟を照合する技術が糸練功です。
(糸練功の詳細は、「糸練功に関する学会報告」をどうぞ・・・専門職向けです)
患者さんの〝病態〟背部(胆嚢)、右季肋部から解析された適合処方は、以下のとおりでした。
○背部(胆嚢)と、右季肋部の反応より
A証) 大腸 臓腑病 陽証 金銭草系統の証
B証) 胆 臓腑病 陽証 柴胡桂枝湯系統の証
背部と右季肋部から、2つの共通した異常(病態)が確認されました。
A証)の金銭草系統の漢方薬で治療すべき病態・・・
この病態は、生じた胆砂が胆嚢を圧迫して発している異常と思われます。
B証)の柴胡桂枝湯系統の漢方薬で治療すべき病態・・・
この病態は、胆管内に炎症が生じた場合によく現れる異常です。
これらの2つの異常(証)の存在は、治療には金銭草系統と、柴胡桂枝湯系統の2種の漢方薬が必要であることを意味します。
その旨を患者さんに伝え、漢方治療を開始しました。
胆砂と胆嚢炎の治療経過
・・・0ヵ月後
背部(胆嚢)の痛み : 強い
右季肋部の痛み : 強い
・・・2ヵ月後
背部(胆嚢)の痛み : 軽い
右季肋部の痛み : 軽い
・・・5ヵ月後
背部(胆嚢)の痛み : 消失
右季肋部の痛み : 消失
4ヵ月後には、背部(胆嚢)と右季肋部の痛みは完全に消失。
引き続き、漢方治療を継続中です。
胆砂と胆嚢炎の漢方治療に際して
患者さんの長期に渡る胆嚢の痛みは消失し、嬉しい限りです。
ただし、漢方治療を受ける際でも、病院の受診は必ず継続してください。
胆嚢炎の痛みが、何年も持続しているのです。
重症化した場合は非常に危険です。
血液検査、超音波検査、X線検査等を定期的に受けて、ご自身の状態を知っておくことが大切です。