上腹部痛・下痢を伴う胆石
「腹が張って、苦しい」と、30歳代後半の男性。
特に、油っこい物を食べると、その後に右上腹部の痛みに襲われるという。
激しく下痢をすることもあるそうである。
病院では「胆石症(たんせきしょう)」と診断され、ウルソ錠(ウルソデオキシコール酸)が処方されていた。
他に、強度の鼻づまりを訴えていた。
口呼吸を繰り返しているために、「口臭が気になる」と申された。
一連の症状を聞く限り、
「この方の胆石症には柴胡(さいこ)剤が適応するだろう」
と、察しはついた。
しかし、それは「憶測」にすぎず、まだ処方決定の段階ではない。
加えて、胆石症であるなら、石(いし)を除去するための「金銭草(きんせんそう)系の適応」を、患者さんの身体は発信しているだろう。
より正確に、見落とさないよう、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を用いて、患者さんを解析し、適合処方を誘導している。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)
この場合、愁訴部(上腹部)と、胆嚢部(背部)の反応を糸練功にて確認。
そして、適合処方を解析する。
その解析結果は・・・
○愁訴部・胆嚢部の反応より
●金銭草+茯苓(きんせんそう+ぶくりょう)証(A証)
●四逆散加減方(しぎゃくさんかげんほう)証(B証)
上記2証が、治療を要する低い合数で確認された。
「○○証」との表現は、○○という漢方藥に適応する病態(治療ポイント)である。
(A証)、(B証)は、胆石症によくある治療パターンである。
ことに、四逆散加減方証(B証)は、精神活動の不調と関わりが深い。
B証の合数の低さでは、腹部膨満感の他に、不眠の傾向があるやも知れない。
症状を問うと、「睡眠の途中で目覚めると二度寝ができない」と申された。
「やはり・・・」
四逆散加減方の確証は、ますます高まった。
早速、金銭草+茯苓、四逆散加減方 にて治療を開始する。
・・・1ヵ月後
腹部膨満感:軽度(改善中)、右上腹部の痛み:消失、下痢:消失
鼻づまり:軽度(口臭は気にならず)
睡眠時の中途覚醒:減少傾向
・・・2ヵ月後
腹部膨満感:消失、右上腹部の痛み:消失のまま、下痢:消失のまま
鼻づまり:消失(口臭は消失)
睡眠時の中途覚醒:消失
・・・現在
漢方治療を継続中。
糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します
実践漢方のコメント
上腹部痛・口臭・下痢を伴う、胆石症への漢方治療例です。
経過は至って順調です。
治療開始から6ヵ月後、病院の検査で「胆石は確認されなかった」とのこと。
弱音を吐かず、黙々と治療を続けた成果です。
ここで注意すべき点があります。
漢方治療の2ヵ月後には、上腹部痛、腹部膨満感、口臭など全症状は消失しています。
しかし、そこで服用を止めてはいけません。
胆石症は再発しやすいのです。
漢方治療の卒業は、ご自身の自然治癒力が満充電(10.0合)になった時です。
焦らず、継続することが必要です。
さて、ここで紹介した胆石症の治療例を見て
「胆石、治すの簡単じゃん!」
と思われる方がいるかも知れません。
しかし、これは一例です。
胆石症に限らず、適応する漢方薬は、患者さん一人ひとり異なります。
個々の患者さんに応じて、適合処方は決めるのです。
適合しない漢方薬は、何の効きめもありません。
そうです、漢方治療の命は、「患者さんと薬の適合性を見抜くこと」なのです。
一人ひとりの患者さんに、的確な漢方処方を選ぶ。
そのために、当薬局は糸練功という技術を活用しています。
一人でも多くの先生に、糸練功の関心が広まることを祈念してやみません。
治療に要した漢方薬と費用
漢方薬 | 漢方薬の種類 | 料金(30日分) |
四逆散加減方 | 散薬 | 12,000円 (税別) |
金銭草+茯苓 (50日分) | 煎じ薬 | 5,500円 (税別) |
※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります