坐骨神経痛(腰痛)と血行障害

70歳代、女性。

平成21年3月 初来局。

平成19年の秋より、右側の臀部の痛みを感じ、次第に右足の外果(外くるぶし)にかけて”ズキーン”と痛みが走るようになったと御婦人は申された。

病院にて、坐骨神経痛(ざこつしんけいつう)と言われ、鎮痛剤とシップ薬が処方された。
だが、冬にかけて 痛みは悪化の一途をたどったそうである。

足を引きずり歩く姿は痛々しく、「夕刻から台所に立つのが辛い」と嘆かれていた。
近所のコンビニへ出かけるのもおっくうで、一日の大半は「こたつから離れられない」状況だった。

既往症として、およそ10年前より 朝方の手のこわばり(リウマチ様)が現われている。

問診の後、愁訴部(患部)を坐骨神経の走行に沿って 糸練功(しれんこう)にて確認・分析する。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
愁訴部(臀部・坐骨神経)の反応

-0.2合臓腑病三焦陽証桃核承気湯
0.3合臓腑病大腸陽証C接骨木葉製剤

症状
臀部~下肢の痛み(激しい)
暖めると痛みが軽減(コタツから離れられない)


1ヵ月後
愁訴部(臀部・坐骨神経)の反応

1.3合臓腑病三焦陽証桃核承気湯
2.0合臓腑病大腸陽証C接骨木葉製剤

症状
臀部~下肢の痛み(軽度)
漢方治療の開始後、急速に痛みが緩和
動作が活発化し、すすんで掃除をするように


3ヵ月後
愁訴部(臀部・坐骨神経)の反応

3.4合臓腑病三焦陽証桃核承気湯
4.9合臓腑病大腸陽証C接骨木葉製剤

症状
臀部~下肢の痛み(消失)
痛みは消失し、「外出が楽しい」と申される
「朝方の手のこわばり」も消失

11ヶ月後、漢方治療を終了する


結語

坐骨神経痛の症状が激しく、当初は苦痛に顔を歪ませておられた患者さん。

しかし、漢方治療の開始より、急速に痛みは軽減。
1ヶ月後の笑顔を拝見した際には、漢方医学の素晴しさを実感しました。

今回使用した「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」は、瘀血(血行障害)の改善処方です。
桃核承気湯の適応症状(=桃核承気湯証とうかくじょうきとうしょう)は、激しい性質があり、神経症状も伴います。
相当お辛かったことと察します。

桃核承気湯証の特徴は、症状が左半身に偏り、便秘がちな方に多いのです。
が、患者さんは便秘傾向ではなく、患部も右側でした。
よって、従来の経験では、本処方を選択しなかったと思います。

漢方薬でお病気を治そうとする場合、坐骨神経痛という病名は参考程度の情報に過ぎません。
「坐骨神経痛はこの漢方薬で治る」という明確な法則はありません。
漢方医学が確立された数千年前には、現代の病名はないのです。

漢方治療で大切なのは、患者さんと漢方薬の適合性です。

素人さん曰く:
「Aさんがあの漢方薬で治ったけど、私は治らなかった・・・私は漢方薬が効かない体質なのかも・・・」
それは大きな間違いです。

「的外れの漢方薬を選んだ」当然の結果です。

我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。
漢方薬は、患者さんに合わせて効かせるものです。
適合しない漢方薬は、全く効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。

どのように適合性を見極めるか・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。

坐骨神経痛の場合、痛みを発している患部に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析し、「適合処方を知る」技術が糸練功です。

服薬前に、薬の適・不適を識別する方法です。
患者さんの臓腑・經絡の状態を分析し、薬の検体を生体へ近づけて、異常磁場の変化を解析します。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

そして、
1.桃核承気湯(とうかくじょうきとう)証
2.C接骨木葉製剤(Cせっこつもくばせいざい)証
の、適合処方を得たのです。

・・・証(しょう)とは、
・・・の漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気を意味します。

つまり、相談の段階で
「本症状は、桃核承気湯 と C接骨木葉製剤で治せる確証」を把握したわけです。

この方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な漢方薬が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代を省けるのです。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
漢方薬が自然治癒力を目覚めさせ、患者さん御自身の細胞が自己修復を始めます。

現実に、患者さんが治っている事実は、漢方薬の適合性の証明でもあります。

「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
桃核承気湯散剤9,000円
(税別)
C接骨木葉製剤散剤12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります