抗ミュラー管ホルモン(AMH)は、卵巣内の卵胞から分泌され、経年とともに減少するホルモンです。
AMH値は、おおよそ1~10ng/mlの範囲にありますが、1ng/ml を下まわると、相当な卵胞数の減少が考えられます。
先日、妊娠の朗報を下さった御婦人(40歳)のAMH値も、0.61ng/mlでした。
御婦人が二人目不妊の漢方治療を依頼されたのは、14ヶ月前。
「卵管機能の低下の疑い(卵管狭窄)」があるとされ、不妊外来にて「六君子湯」と「柴苓湯」の投薬を受けていました。
当初の基礎体温表は、以下のとおりです。(図1)
高温期、低温期ともに安定せず、妊娠に至るまでの道のりは、相当な労力を要すると思われました。
不妊外来には通院していただきながら、検査値も参照しつつ、糸練功による漢方的解析を行いました。
(糸練功の技術的な要項は、専門家向けですが「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)
御婦人を取り巻く、不妊治療のハードル(異常)は、幾重にも錯綜していました。
高プロラクチン血症、卵胞刺激ホルモン(FSH)の高値、卵管狭窄、子宮内の扁平隆起ポリープ、第五頸椎の異常・・・ect
妊娠を実現させるためには、多くの漢方処方が必要でした。
そのため、糸練功にて異常の軽重を確認しながら、優先順位を決め、段階的に漢方治療を進めました。
A証) 甲字湯加減方証 (陽証)
・・・・・・高プロラクチン血症への処方
B証) 桂枝加竜骨牡蠣湯加減方証 (陽証)
・・・・・・卵胞刺激ホルモン(FSH)異常への処方
C証) N・スクアレン製剤証 (陰証)
・・・・・・卵管狭窄への処方
D証) 石決明・ヨクイニン製剤証 (陽証)
・・・・・・扁平隆起ポリープへの処方
K証) 桂枝一越婢二湯加蒼朮証 (陽証)
・・・・・・第五頸椎の異常への処方
漢方治療を積み重ねるにつれて、症状の指標である”糸練功の合数”も改善しています。
やがて、高温期・低温期の識別困難だった、基礎体温表も安定化。(図2)
当初よりも良好な状態です・・・。
御婦人は、数ヶ月で41歳を迎えます・・・そこで、一刻も早い妊娠に向けて体外受精にも臨まれました。
そして、クリニックにて総合検査・・・その報告書には、
抗ミュラー管ホルモン(AMH):0.61ng/ml
“実年齢(40歳)よりも、高齢女性の数値”といわれ、がっかりしたご様子・・・。
加えて、
甲状腺刺激ホルモン(TSH):5.6μIU/ml という高値が伝えられました・・・甲状腺機能の低下が示唆されます。
甲状腺機能の低下は、不妊や流産の原因ともなります。
また、妊娠しても胎児の発育に悪影響を与えやすいのです。
幸い、チラージン投与により、TSH:1.4μIU/ml で安定化したため、2ヵ月後に”体外受精-胚移植”の予定とのこと。
・・・12ヵ月後 (胚移植の2ヶ月前)
御婦人のご意向は、”できれば自然妊娠したい”とのことでした。
甲状腺を、糸練功にて解析すると・・・
TSHは正常値であるそうですが、”-0.1合”という低い合数に、看過できない異常(E証)が存在していたのです。
E証) F曲參製剤証 (陰証)
・・・・・・甲状腺への処方
このまま移植を行っても、良い結果は残せません。
甲状腺を正常化を目標に、その日からF曲參製剤を服用していただきました。
・・・14ヵ月後 (胚移植の数日前)
妊娠反応陽性 : クリニックにて、“自然妊娠”を確認。
現在(16ヵ月後)も、F曲參製剤と、N・スクアレン製剤を継続中。
経過は至って順調です。
高プロラクチン血症、卵胞刺激ホルモン(FSH)の高値、卵管狭窄、子宮内の扁平隆起ポリープ、第五頸椎の異常・・・
錯綜した障壁(異常)を一つ一つクリアして、最終関門はクリニックで指摘してくれた”甲状腺機能の低下”でした。
自然妊娠へ至ったのは、漢方医学だけでなく、現代医学のお陰でもあります。
ありがとうございます。
平成29年11月15日:追記
患者様より連絡・・・平成29年8月、元気なお子様を無事にご出産されたとのこと。
ご報告、ありがとうございます。