肩関節周囲炎:五十肩(肩関節の痛みと運動障害)

平成21年3月 初来局。

4年前、当薬局にて肩関節周囲炎(五十肩)の漢方治療を受けられた男性(60歳代)。

前回の経過はすこぶる良好だった。
しかし完治を待てない彼は、途中で漢方治療(漢方薬の服用)を中断していた。
服薬中止による肩関節周囲炎(五十肩)の再発である。

再発は、平成20年秋。
右肩に鈍痛を感じると、腕の挙上が困難となり、再度の漢方治療の依頼へ訪れた。

痛みに耐えつつ腕を上げるが、腕の挙上の限界は「肩の高さ」だった。
寝返りをうつたびに痛みが増強し、その為の睡眠障害もきたしておられた。

問診の後、愁訴部(肩関節~上腕)を痛みの走行に沿って 糸練功(しれんこう)にて確認し、適合処方を解析した。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
肩関節周囲炎(五十肩)の反応

0.7合經絡病膀胱陽証桂枝二越婢一湯
3.0合臓腑病陽証降香曲參製剤

症状
肩~腕の痛み(激しい)、腕の挙上(肩の高さまで)
睡眠障害:あり(肩の激痛で何度も覚醒)


1ヵ月後
肩関節周囲炎(五十肩)の反応

3.2合經絡病膀胱陽証桂枝二越婢一湯
4.8合臓腑病陽証降香曲參製剤

症状
肩~腕の痛み(軽度)、腕の挙上(頭頂の高さまで)
睡眠障害:なし


3ヵ月後
肩関節周囲炎(五十肩)の反応

6.7合經絡病膀胱陽証桂枝二越婢一湯
7.2合臓腑病陽証降香曲參製剤

症状
肩~腕の痛み(消失)、腕の挙上(完全に挙上可能)
ゴルフ練習を始める

4ヶ月後、漢方治療を終了する


結語

再発からの経過が短かったお陰で、回復が非常に速かった漢方治療の一例です。

治療当初の肩関節周囲炎(五十肩)の反応は、0.7合の經絡病と、3.0合の臓腑病です。

經絡病は、いわゆる急性期で、こじれていない状態です。
風邪の初期症状と同様に、適切な治療によって急速に改善します。

さて、この治療経過を見る限り「簡単な漢方治療」と思うやも知れません。
しかし、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。

漢方薬は 患者さんに合わせて効かせるものです。
適合しない漢方薬は、全く効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。

適合性の見極め方・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

肩関節周囲炎(五十肩)の場合、痛みを発している患部に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析する技術が糸練功です。
薬を服用する以前に、処方の適・不適が識別できます。

患者さんの臓腑・經絡の状態を解析し、性質の合致する数種の漢方薬(検体)を患者さんへ近づけます。
もし、適合処方であるなら、患者さんの異常が消失します。(ほんの数分間ですが)
そのように適合処方を探索するのです。

(非常に手間がかかります・・・ですから、完全予約制です)

そして、
1.桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいちとう)証
2.降香曲參製剤(こうこうきょくじんせいざい)証
の、結果を導いたのです。

・・・証(しょう)とは、・・・の漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気のことです。

つまり、相談の過程で「患者さんの症状は、桂枝二越婢一湯 と 降香曲參製剤で治せる確証」が得られたわけです。

この解析方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な薬が判明します。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代が省けます。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力が目覚め、患者さんご自身の細胞が自己修復を始めます。

現実に、患者さんが治っている事実は 漢方薬が適合していることの証明でもあります。

「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
桂枝二越婢一湯散剤12,000円
(税別)
降香曲參製剤散剤12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります