頚椎椎間板ヘルニア(上腕の痛み・しびれを伴う)

ある日、空手仲間でベテラン教諭の友人から相談を受けた。

「腕が痛くて、痺れ(シビレ)もひどくて、チョークが握れない・・」
病院で「頚椎椎間板ヘルニア」と診断され、手術をすすめられたそうである。「夜は 寝返りをうつたびに痛くて寝られないんだよ・・・」
彼は、痛みによる睡眠障害で、疲労困憊だった。

「できるなら手術は避けたい・・・漢方薬で対応できないか?」

一通りの問診後、愁訴部(頚椎・上腕)を、糸練功にて解析した。

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果を以下に記す。

●桂枝二越婢一湯(けいしにえっぴいちとう)証
●柴胡桂枝湯加芍薬(さいこけいしとうかしゃくやく)証

2つの証が、極めて低い合数に確認された。
「○○証」と表現しているのは、漢方処方の適応(=病態)である。
つまり、○○証には、○○という漢方薬で治療が成立することを意味する。

合数の低さから、彼の苦痛は相当なものだと察せられた。
適量を算出、煎じ薬と散薬を調剤し、今日から服用するよう告げた。

1ヵ月後
彼はと嬉しそうだった。
「飲み始めて、痛みはすごい楽になってる!」
痛みによる睡眠障害もなくなったそうである。

合数を確認すると、2つの証は ともに1合以上の上昇を見せていた。
その後も友人は、愚痴も言わずに薬を煎じ、一日も欠かさず服薬し続けた。

1年後
痛み・痺れは完全消失し、病院でMRI検査を受けた。
ヘルニアは消失し頚椎も正常化していた。

今でも彼は空手を続けている。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


考察

「頚椎椎間板ヘルニア」の漢方治療による一例です。

糸練功を知らなかった過去の私では、歯が立たなかった椎間板ヘルニアです。

頚椎椎間板ヘルニアを内科的に完治させることは困難といわれています。
過去に漢方の治療依頼を受けては、治しきれない辛酸を幾度もなめました。

確かに、椎間板ヘルニアに適応する漢方処方はあります。
しかし、頚椎椎間板ヘルニアの病態は複雑です。

その上、患者さん一人ひとりに適合する漢方処方も、処方数も異なります。

思いつく処方を片っ端から服用すれば、いつか治る日が来るかもしれません。
しかし、適合処方に当たるまでに何年もの歳月がかかるでしょう。
費用も膨大になります。
挙句の果てには患者さんは疲れ果て、途中で治療を断念するでしょう。

頚椎椎間板ヘルニアの漢方療法は、雲をつかむが如く、難解な仕事です。
問診だけで椎間板ヘルニアの適合処方を見抜く先生は「神の領域の名医」です。

ただ、糸練功の応用法を知れば、正確な処方選択が可能になります。
糸練功は病態を正確に分析し、適合処方を見抜く技術です。

糸練功を考案された木下順一朗先生に、衷心より感謝の意を表します。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
桂枝二越婢一湯散薬11,000円
(税別)
柴胡桂枝湯加芍薬散薬12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります