(のどの異物感と不眠を伴う)三叉神経痛

二十歳代の男性が漢方相談に訪れた。

主訴は、のどの異物感と不眠(寝つきが悪い)だが、顔面痛を強く訴えておられた。

病院を転々とされて、ある所ではCTには異常が見られず、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬(デパス)が処方され・・・。

ある病院では、「三叉神経痛(さんさしんけいつう)」と診断され、カルバマゼピン(テグレトール)の処方を受けたが、左眼周囲の痛みは軽減されず・・・。

一連の症状を伺う限りでは、神経症状の関与を深く感じた。

問診中、木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)の講義を思い出していた。
「五志の憂の病気には、頸椎(5番周辺)の確認をしたほうがいい」

五志の憂(ごしのゆう)とは、心の疾患である。

複雑化した眩暈や、癲癇、円形脱毛症、高血圧症など・・・。
患者さんに共通性があることを、先生は気づかれていた。
その共通性とは、「心の症状には、頸椎異常と相関性が高く、頸椎治療をすると神経症状も解消することが多々ある」ことである。

その後、当薬局においても、該当症状の方に頸椎異常を確認し、頸椎の適合処方によって神経症状も改善させた経験をしている。

今では、神経症状が関連する方には、頸椎異常の確認を励行している。

問診後、顔面痛の愁訴部、頸椎、そして五志の憂を、糸練功(しれんこう)にて確認し、適合処方を解析していく。
(糸練功の詳細は、「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

患者さんの5番頸椎に、異常を確認した。

その解析結果は・・・

●葛根加朮附湯(かっこんかじゅつぶとう)証

である。
合数は 0.1合・・・強い頸部のこりも訴えておられた。
また、顔面痛の適応も、頸椎異常と同様「葛根加朮附湯証」であった。

「○○証」の表現は、○○という漢方藥で、治療が成立する意味を持つ。

葛根加朮附湯・・・
葛根湯に、蒼朮+附子を加えた漢方処方である。

この適合処方から推測すると、「三叉神経痛」の診断はもっともである。
しかし、強い神経症状を伴うため、デパスを処方されても不思議ではない。

一方、糸練功による漢方的解析は、「患者さんの顔面痛は、頸椎異常が誘発していること」を暗示している。
即ち、頸椎への適合処方により、顔面痛(三叉神経痛)も治癒できることを意味する。

患者さんは、エキス剤を希望していた。
よって、「葛根加朮附湯」に相当する薬方(葛根湯エキス+加工附子製剤+R青皮製剤)を、同時服用。

・・・1ヵ月後
顔面痛:軽度(改善中)
(頸部のこりも減ずる)

・・・3.5ヵ月後
顔面痛:消失
(頸部のこりも消失)

・・・現在
漢方治療を継続中。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

三叉神経痛の漢方治療による一例です。

ここでは、頸椎異常に連動した顔面痛(三叉神経痛)を報告しています。
通常の三叉神経痛では、痛みを感ずる患部の反応を解析して適合処方を誘導します。

また、神経症状を伴っていた爲、五志の憂(自律神経の反応穴)に加え、頸椎チェックを行いました。
結果的に、頸椎異常の病態(治療ポイント)と、三叉神経痛の病態は、同一でした。

さて、現代医学的には「頸椎異常と神経症状の相関性はない」とされています。
ところが、神経症状を伴う「メニエル氏病(眩暈)」、「癲癇(てんかん)」などの方には、頸椎異常のある方が多いのです。
特に、5番頸椎の異常が際立っています。

眩暈の治療が順調に進行しているのに、突然違ったパターンの眩暈を発症する方。
次々に異なった病態(治療ポイント)が現われ、何種類もの漢方薬を服用される方。
そういう方に多いのです。

当薬局では、頸椎損傷の既往のある方、ストレートネック・頸椎症を有する方の神経症には、頸椎治療の漢方処方は必須となります。

本症例は、幸いにも頸椎の病態は「1つだけ」だった。
三叉神経痛と、頸椎の治療ポイントが一致していた。
よって、1処方だけで頸椎異常と三叉神経痛の治療ができた。
という、とても幸運な例であります。

さて、当薬局の改善症例は、糸練功を活用したものです。

「なぜ糸練功が必要なのか?」

漢方薬を闇雲に選んでも、患者さんは治せません。
漢方薬は、患者さんに適合したときだけに効くものだからです。
病態を正確に解析し、適合処方を誘導することが漢方治療の命です。

その方法として、当薬局は糸練功を活用しています。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。

必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
葛根湯エキス+加工附子製剤+R青皮製剤散剤+錠剤18,800円(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります