咽頭神経症(のどの異物感)

「喉(のど)に何かできているような、喉に何かつっかえた感じが・・・」
30歳代の女性が、「咽喉(のど)の異物感」を訴えられていた。

千葉県内の耳鼻科咽喉科で内視鏡検査をしてもらったが、
「何も異常は見あたらない。ストレスだろう。」 と言われたそうである。

検査をしても異常がない・・・
このようなケースには「咽頭神経症」という病名を付けられることが多い。

漢方の世界では、古くから「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれ、女性に多いストレス由来の症状である。
この症状には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)の適応が多いが、一概には言えない。

問診の後、愁訴部(のど)と自律神経の反応穴を、糸練功(しれんこう)にて確認し、異常反応を解析した。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

そして、解析結果は・・・
● 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)証(しょう)
が極めて低い合数に確認された。
自信満々に「もう、だいじょうぶ!」と、半夏厚朴湯の服用開始。

1ヵ月後、 服用開始直後より、咽頭神経症らしき「のどの異物感」は急速に軽くなっていた。
ところが、2日前から「今までとは違った『喉の違和感』がある」とのことだった。
「おかしい・・・」

糸練功で喉を注意深く確認すると・・・あった!
新たな適応(異常)が、あらわれていた。

● 柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)証
が、極めて低い合数に確認された。

一方、1ケ月前の半夏厚朴湯証は、当然のごとく 1合以上改善していた。
「この1か月の間、なにか、新たな心配事とかありました?」
そう伺うと、患者さんは肯かれた。

このことは、患者さんが今、強く感じておられる症状は、「柴胡加竜骨牡蠣湯証が原因の喉の違和感」であることを示している。

幸いなことに、発症から間もないため、經絡病の(こじれていない)状態だった。
1)半夏厚朴湯、2)柴胡加竜骨牡蠣湯 の服用時刻を設定し、服用開始。

翌日、患者さんから電話があった。
「新しい薬(柴胡加竜骨牡蠣湯のこと)を飲んで、すぐに喉が楽になった。」 とのご報告。

柴胡加竜骨牡蠣湯証は、2週間で完全に消失した。
現在は半夏厚朴湯のみを継続し、漢方治療の終了も間近である。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

「喉(のど)の異物感・違和感」 を主症状とする咽頭神経症の改善症例です。

漢方薬の服用を始めて、2ヵ月後にはすでに喉の異物感はなくなっています。
が、再発しないレベルに上がるまで、服用を継続していただいてます。

さて、咽頭神経症と思われる喉の異物感を感じても、最初は耳鼻咽喉科を受診してください。
検査をしても異常がない・・・
それでも、喉に異物感(違和感)がある。
その時が、漢方治療の適応です。

ここでご紹介した例は、「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」と「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」による改善例です。

しかし、咽頭神経症(のどの異物感)へ適応する漢方薬は、それだけではありません。
「加味逍遙散(かみしょうようさん)」の適応もあれば、
「桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」のケース
・・・ まだまだ・・・候補にあがる漢方処方は、30種以上あります。

漢方薬は、「患者さんの病態にピッタリ適合しないと」効果がありません。
素人さんが漢方理論の裏づけも無しに、漢方薬を選んでも時間とお金の無駄です。

当薬局は、適合処方の判断に糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。
それは、愁訴部(ここでは咽喉)の異常を解析し、適合処方を見つけ出す方法です。

今回、半夏厚朴湯証ではない新たな適応にも冷静に対応できたのは、糸練功による正確な処方鑑別ができるからです。

一人でも多くの先生方が、糸練功を活用することを祈念してやみません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
半夏厚朴湯散薬9,000円
(税別)
柴胡加竜骨牡蠣湯散薬7,000円
(15日分:税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります