神経性胃腸炎(下腹部痛と軟便)
高校に進学して半年後・・・甥からの電話だった。
「お腹が痛いんだけど・・・」
病院から整腸剤とブスコパン(鎮けい剤)が処方されている。
が、症状は一進一退と言う。
下痢はしないが、軟便である・・・。
毎日のように下腹部が痛むが、特に月曜日に悪化するという。
ただ、休日は比較的落ちついているという。
ピーンときた!
下腹部の痛む箇所と、自律神経の反応穴を糸練功(しれんこう)で解析する。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)
糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します
その解析結果は・・・
● 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)証
● 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)証
2つの証が、極めて低い合数で確認された。
甘草瀉心湯証は、腹痛の箇所と 自律神経の反応穴で合数が一致していた。
このことは、精神状態と腹痛とがリンクしていることを推測させる。
病院を受診すれば、「神経性腸炎」とか「過敏性腸症候群」と診断されるだろう。
油物と乳製品の摂取を控えるよう伝え、甘草瀉心湯と芍薬甘草湯を渡した。
1週間後、 甥から
「お腹はもう痛くないよ! ありがとう。」との連絡。
「まだ完治していない! ちゃんと飲め!」と著者は伝えた。
甥は、服薬をサボりがちだが 腹痛と軟便は、治まっている。
実践漢方のコメント
「ストレス誘発性と思われる腹痛・軟便」 への漢方治療例です。
彼の母親の話では、学校から週末にはタップリ宿題がだされるそうです。
しかし、甥っ子は 土・日曜にはみっちり友人と遊びます。
そして、月曜の早朝に「ヒーヒー」言いながら宿題をしているそうです。
そんな背景を見れば、腹痛が 月曜に悪化するのも、うなずけます。
「宿題やっとけば、治るんじゃ?」とさえ思います。
本症例の 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)は、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)という漢方処方へ「甘草を増量した」処方です。
1日量、たった数グラムの甘草を増やしただけです。
ですが、その作用は半夏瀉心湯に比して劇的に変化します。
甘草瀉心湯証は、半夏瀉心湯証よりも精神的な関与が強く、激しい下痢を伴うことが多いです。
しかし、今回は下痢ではなく、軟便です。
(×××証とは、×××という漢方処方が適応する病態を示します。)
よって、糸練功の確認作業がなければ、甘草瀉心湯証を見逃していたやも知れません。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)
実際の最終確認では、腹部の異常反応は 甘草瀉心湯の検体で綺麗に消え(スムーズとなる)、半夏瀉心湯では消えませんでした。
明らかな、「甘草瀉心湯証」でした。
漢方治療の命は、患者さん(病態)と、薬の適合性を見抜くことです。
適合しない漢方薬は、何の効きめもありません。
一人でも多くの先生が、糸練功を活用することを祈念してやみません。
必要となった漢方薬の料金
漢方薬 | 漢方薬の種類 | 料金(30日分) |
甘草瀉心湯 | 散薬 | 12,000円 (税別) |
芍薬甘草湯 | 散薬 | 9,000円 (税別) |
※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります