胆嚢肥大(右上腹部の圧迫感・痛み)
30歳代、男性。
義弟が、男性を連れて来局した。
職場の部下が、原因不明の腹痛で苦しんでいると言う。
病院で MRI、CT検査をしても原因が特定できないらしい。
右の上腹部が、一週間に1回の頻度で痛むという・・・。
その痛みは、なぜか金曜日に頻発するらしい。
「右の上腹部が苦しくて、激しい痛みなのに原因不明で・・・」
男性は途方にくれていた。
持参されたエコー画像を見ると、確かに胆嚢は肥大していた。
痛む箇所は、胆嚢部だろう。
しかし、胆石も胆砂も認められない・・・。
ビール好きな彼は、日課のように毎晩ビールを飲んでいた。
しかし、今は悪化を恐れて控えているという。
乳製品も好物で・・・特に生クリームには目がないらしい。
問診の後、腹側と背側より、痛む箇所を糸練功(しれんこう)にて分析する。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)
糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します
治療経過
0ヵ月後
愁訴部(胆嚢部)の反応
0.1合 | 臓腑病 | 胆 | 陽証 | 柴胡桂枝湯加減方 |
1.2合 | 臓腑病 | 胃 | 陽証 | 甘草瀉心湯 |
症状
胆嚢部の痛み(強い)、圧迫感(強い)
右上腹部(胆嚢部)の痛みが強く、圧迫感は顕著
1ヵ月後
愁訴部(胆嚢部)の反応
1.5合 | 臓腑病 | 胆 | 陽証 | 柴胡桂枝湯加減方 |
2.4合 | 臓腑病 | 胃 | 陽証 | 甘草瀉心湯 |
症状
胆嚢部の痛み(なし)、圧迫感(なし)
右上腹部の痛み・圧迫感は、ともに消失
現在も、漢方治療を継続中
結語
このような上腹部(右季肋部)の痛みは、胆石症(たんせきしょう)を疑われることが多いです。
胆道感染症・胆嚢炎・胆管炎でも同様に痛みます。
が、その多くは発熱を伴います。
CTやMRIの検査をしても、胆石はもちろん胆砂すら見つからない・・・。
しかし、胆嚢は肥大している。
そして患者さんは、右季肋部の痛みを訴えている。
通常では、全く検討がつきません。
ですが、糸練功(しれんこう)という技術が、大きな助けとなりました。
人が痛みを訴えている箇所には、必ず磁場の乱れが生じています。
それを解析して、有効な処方(漢方薬)を誘導する技術が糸練功です。
解析結果は、適合処方として算出されます。
ですから、病名・原因が明確でなくても、治療法は解ります。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)
今回、
1)柴胡桂枝湯加減方(さいこけいしとうかげんほう)の適応症
2)甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとう)の適応症
である、2つの情報が、愁訴部(胆嚢部)から解析されました。
そして、その2つの情報は、「五志の憂(ごしのゆう)」という、自律神経の不調に関係するツボの情報と一致していました。
それは、「限りなく心因性に近い上腹部痛」であることを連想させます。
元々、柴胡桂枝湯加減方も、甘草瀉心湯も、消化器疾患の適応に限らず、神経科領域に多用されます。
(よくよく伺うと、患者さんは家族のことで悩んでおられました)
この症状を西洋医学的な見地で考察すると、
「胆道ジスキネジー」に見られる 精神的緊張による胆道出口(オッディ括約筋)の過収縮 → 胆汁分泌の阻害 → 胆のう肥大
という背景があるのかも知れません。
また今回は、食養生として油物や乳製品を控えてもらいました。
その理由は、甘草瀉心湯の適応の存在です。
甘草瀉心湯などの「瀉心湯類の適応者」は、油(脂肪)の消化が円滑にできません。
油物や乳脂肪の制限は必須です。
大好きな生クリームを、節制してくれた甲斐もあり、円滑な治療経過です。
必要となった漢方薬の料金
漢方薬 | 漢方薬の種類 | 料金(30日分) |
柴胡桂枝湯加減方 | 散薬 | 12,000円 (税別) |
甘草瀉心湯 | 散薬 | 12,000円 (税別) |
※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります