疲労感を伴う慢性下痢症
40歳代、女性。
平成21年7月 初来局。
御婦人は、30歳の前半 原因不明の腹痛で一週間の入院をされていた。
それをきっかけに、下痢症状が頻発するようになったとのこと。
腹痛と腹鳴(お腹がゴロゴロ鳴ること)がすると、その後に強い便意に襲われるという。
毎食後はもちろん、日に5回はトイレにかけこむため、何年も旅行にでかけられていない。
病院を幾度と変え、いろいろな治療をしてもらったが好転はしなかった。
表情は暗く、「こんな自分がイヤ」だと何度もこぼされていた。
身長は 160cm 弱だが、体重は 40kg を切っている。
疲れやすく、風邪をひきやすい、眼精疲労(目のしょぼつき)も強く訴えられていた。
ひととおりの問診の後、大腸の反応穴(はんのうけつ)と、腹部(脾)を 糸練功(しれんこう)にて確認し、適合処方を解析した。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)
糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します
治療経過
0ヵ月後
大腸・腹部(脾)の反応
-0.5合 | 臓腑病 | 心 | 陽証 | 半夏瀉心湯合六君子湯 |
1.1合 | 臓腑病 | 肝 | 陰証 | 補中益気湯加人參 |
症状
下痢(5~6行/日)、腹痛(あり)、疲労感(強い)
1ヵ月後
大腸・腹部(脾)の反応
0.3合 | 臓腑病 | 心 | 陽証 | 半夏瀉心湯合六君子湯 |
2.0合 | 臓腑病 | 肝 | 陰証 | 補中益気湯加人參 |
症状
下痢(1~2行/日)、腹痛(消失)、疲労感(軽度)
下痢の回数は減少し、腹痛は消失、疲労感も軽くなる
3ヵ月後
大腸・腹部(脾)の反応
2.6合 | 臓腑病 | 心 | 陽証 | 半夏瀉心湯合六君子湯 |
4.9合 | 臓腑病 | 肝 | 陰証 | 補中益気湯加人參 |
症状
下痢(0行/日)、腹痛(消失)、疲労感(消失)
下痢は消失し通常便に(便通:1~2行/日)、疲労感も消失
16ヵ月後、漢方治療を終了する
結語
相談当初の御婦人は、自分自身がお好きでなかったようです。
「あんなに通院したのに、まだ治らない・・・」 とか、
「こんな自分がイヤだ・・・」 というような、他人(病院)や御自身を否定し続けておられました。
私の経験から申しますと、自分や他者の否定は、病気の回復を遅れさせます。
つらい症状は、現実にご自分に起こっている現象です。
不平不満、愚痴、文句、泣き言は自己否定につながります。
また、病気になったご自身を受け入れられる人は治り方がスムーズです。
その旨の助言を伝えて、漢方治療は始まりました。
御婦人はそれ以来、物事を肯定的にとらえるよう実践したそうです。
人の感じ方は、時に対極的です。
日に5回以上あった下痢が、2回に減った時、あなたはどう感じますか?
「下痢の回数が 2回に減っている・・・嬉しい」
「良くはなっているが、まだ 日に2回 下痢をする・・・不満だ」
どちらが得か? お分かりですよね。
(私の好きな「小林正観さん」の本から、一部引用させていただきました)
さて、この治療経過を見て「簡単な漢方治療」と思うかも知れません。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。
漢方薬は 患者さんに合わせて効かせるものです。
適合しない漢方薬は、全く効きません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。
適合性の見極め方・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。
慢性下痢症の場合、身体の特定のツボ(反応穴)に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析し、検証する技術が糸練功です。
薬を服用しないで 薬の適・不適を識別する方法です。
患者さんの臓腑・經絡の状態を分析し、薬の検体を生体へ近づけて、磁場の変化を解析します。
但し、この解析には 60分ほどの時間を要します。
(ですから、当薬局は完全予約制です)
そして、
1.半夏瀉心湯合六君子湯(はんげしゃしんとうごうりっくんしとう)証
2.補中益気湯加人参(ほちゅうえっきとうかにんじん)証
の、検証結果を導いたのです。
・・・証(しょう)とは、・・・の漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気のことです。
つまり、相談の過程で「患者さんの症状は、半夏瀉心湯合六君子湯 と 補中益気湯加人参で治せる確証」が得られたわけです。
この検証方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な処方が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代が省けます。
適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力が目覚め、患者さん御自身の細胞が自己修復を始めます。
現実に、患者さんが治っている事実は 漢方薬が適合していることの証明です。
「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。
糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。
必要となった漢方薬の料金
漢方薬 | 漢方薬の種類 | 料金(30日分) |
半夏瀉心湯合六君子湯 | 散剤 | 13,000円 (税別) |
補中益気湯加人参 | 散剤 | 12,000円 (税別) |
※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります