黄斑前膜(黄斑上膜)の改善症例

黄斑前膜(黄斑上膜)とは、眼病の一種である。

眼球後部の網膜の手前に膜が張り、黄斑への投影が遮断される疾病である。
高齢者に多くあらわれ、女性に起きやすいと言われている。

その症状は、物が歪んで見えたり・・・
大きく見えたり・・・症状の進行とともに、視力低下をもたらす。

現代医学では、黄斑前膜は薬で治療することはできないとされている。
しかし、当薬局において漢方治療の有効性をみたので、ここに報告する。

患者さんは、60歳代の女性である。
左眼の異常に気づき、眼科で「黄斑前膜(おうはんぜんまく)」と診断された。

患者さん曰く、
「お月さんが、いつも欠けて見える」
「満月であるはずの、月の形が認識できない」
「電信柱の電線が、はっきり見えない」
と、ご自身がお感じになっている現状を語られた。

問診後、左眼を 糸練功(しれんこう)を用いて漢方的解析を行った。
(糸練功の詳細は、「糸練功に関する学会報告」をご参照のこと)

解析結果は・・・

● 黄連解毒湯加大黄(おうれんげどくとうかだいおう)証
● 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)証

以上の2証が、治療を要する低い合数で確認された。
「○○証」の表現は、○○という漢方処方で治療が成立することを意味する。
つまり、この方の治療には、上記2処方が必要である。

早速、黄連解毒湯加大黄、苓桂朮甘湯の服用開始。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

・・・1ヵ月後
「月の形が、少しづつハッキリ見えてきてる気がする」
とのこと。

・・・2ヵ月後
「月の形が、良く見えます。外の電線もハッキリ見える」
と、嬉しそうな報告。
その後、視力の回復とともに、左眼の合数も順調に上昇。

・・・16ヵ月後
眼科にて、「異常なし」と診断される。

・・・17ヵ月後
漢方治療を終了。


考察

黄斑前膜(黄斑上膜)における漢方薬の有効例である。

当薬局において、黄斑前膜の相談件数は、決して多くはない。
だが、あえて報告に至った。

その理由は、昨今の加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)との漢方的アプローチの酷似性からである。

眼科領域では、黄斑前膜は、加齢黄斑変性とは異質の疾病とされている。
当然の如く、西洋医学的な治療法も異なるようである。

一方、著者は過去に、ある論文に目を通した。
2008年の坂東隆弘先生(兵庫県:B&O薬局)の記された論文である。

その文中には、加齢黄斑変性への漢方治療の有効例が記されている。
「黄連解毒湯系統の漢方処方が、多くの加齢黄斑変性症に有効であった」内容である。

そして本報告は、「黄斑前膜における、黄連解毒湯系の有効例」である。

現代医学的には、異なる範疇の黄斑前膜と、加齢黄斑変性が、類似する黄連解毒湯系で改善した事実・・・。
他にも共通項が、見つかるやも知れない。

本掲載をご覧になった先生には、追試の御機会の際に、学術雑誌等へご報告いただければ、幸甚に存じます。

最後に、糸練功の理論を構築され、御指導を賜りました木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)に衷心より感謝いたします。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
黄連解毒湯加大黄煎じ薬15,000円
(税別)
苓桂朮甘湯散剤10,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります