口腔灼熱症候群(こうくうしゃくねつしょうこうぐん)・・・口内の焼けるような痛みを伴うことから、バーニングマウス症候群(Burning mouth syndrome; BMS)ともいわれています。
口腔灼熱症候群の原因に関しては、未だ不明な点が多いのですが、次のことが報告されています。

  1. 閉経後の女性に発症しやすい傾向がある
  2. 男女比の発症率は、圧倒的に女性が多い

当薬局の舌痛症(ぜっつうしょう)を含む口腔灼熱症候群の患者さんも、ほとんどが女性です。

これまでの経験から、口腔灼熱症候群への漢方治療に関して、心因性と思われる処方群への適応が非常に多く見受けられます。
また、精神的な病態を二次的に誘発しうる頸椎異常の関与も感じています。
ここでは、頸椎に生じた骨粗鬆症への治療が、口腔灼熱症候群の改善にリンクした症例を報告しましょう。

患者さんは、60歳代後半の女性です。
何年も、”舌と口の中がヒリヒリする”とお困りでした。
病院による検査では、”舌や歯肉には異常はない”・・・口腔灼熱症候群といわれたそうです。

問診によって得られた情報は、以下のとおりです。

  1. 精神的緊張により、口内のヒリヒリ感が増幅する
  2. 慢性的な”首こり”を感じている

問診の後に、糸練功(しれんこう)という技術を用いて病態と適合処方を解析しました。
チェックポイントは、患者さんの愁訴部(舌と唇)と、頸椎です。
(糸練功の技術的な要項は、専門的で難しいですが「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

その解析結果は・・・

舌・口唇の反応より
A証) 牡蠣肉製剤証 (陽証)

第五頸椎の反応より
B証) 防已黄耆湯合桂枝加苓朮附湯証 (陰証)

これらのデーターは、”牡蠣肉製剤”と、”防已黄耆湯合桂枝加苓朮附湯”によって、患者さんの口腔灼熱症候群の治療が成立することを意味します。
“防已黄耆湯合桂枝加苓朮附湯”は、骨粗鬆症のケースに適合性が現れます。
ですから、患者さんの慢性的な”首こり”には、第五頸椎に生じた骨粗鬆症による骨損傷が関連していると思われます。
そして、何より興味深いことは、頸椎治療のための”防已黄耆湯合桂枝加苓朮附湯”を適用すると、口内の違和感が消失したのです。

早速、漢方薬を服用していただきました。

そして、1ヵ月後・・・

口内のヒリヒリ感は、軽減。
舌のヒリヒリ感は、ほぼ消失。

4ヵ月後・・・

口内のヒリヒリ感は、気にならず。
舌のヒリヒリ感は、消失。

現在も、漢方薬を継続中です。