冬が近づくと、「風邪のひき始めに葛根湯(かっこんとう)・・・」というフレーズをよく聞きます。

葛根湯は、寒冷により体表が冷やされた、表証(悪寒・頭痛・筋肉痛・汗が出ない)という病態に適用されます。
症状は激しいのですが、病は浅い(体表部)状態です。

漢方の世界では、病の原因は「表から裏へ」侵攻するという理論があり、表証の現れている時期は、まさしく風邪のスタート地点です。
それが、「風邪の初期には、葛根湯」といわれている理由です。

しかし、風邪の初期であるはずの患者さんを拝見すると、葛根湯が有効な、いわゆる「葛根湯証(かっこんとうしょう)」の方は多くありません。

ここでは、“寒冷が原因の初期の風邪”について考えます。
寒気、頭痛、咳、鼻水・・・風邪の初期に圧倒的に多いのは、「桂枝二麻黄一湯(けいしにまおういちとう)証」です。
これは、「桂枝湯:麻黄湯=2/3:1/3」の割合で構成された漢方処方です。

我々は、糸練功(しれんこう)という技術を応用して病態を解析し、適合処方を識別しています。
(糸練功の技術的な要項は、専門家向けですが「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

人は風邪をひくと、必ず“風毒塊(ふうどくかい)”と呼ばれる特定部位(ツボ)に、ウイルス反応が現れます。
そのウイルス反応と、患者さんの症状を辿って解析すると、有効な漢方処方は容易に解ります。

この風邪は、葛根湯が効くのか?・・・麻黄湯か?・・・桂枝湯か?・・・それとも、柴葛解肌湯か?・・・。
それを、服薬の前にシミュレートしているのです。
患者さんの手掌に、漢方薬のサンプルが触れた時、瞬間的にウイルス反応が消失したら・・・それが適合処方です。

ある人が言いました。
「葛根湯を飲んだけど、効かなかった・・・」

その理由は明白です・・・葛根湯の適応ではなかったのです。

患者さんと薬の適合性を正確に捉えれば、漢方薬は強い味方です。