耳鳴りと不眠

50歳代、女性。

平成19年2月 来局。

ご婦人は以前、更年期障害による肩こり・頭痛の漢方治療のため、来局されていた。
当時は 「釣藤散(ちょうとうさん)」と、「逍遙散(しょうようさん)」による漢方治療で円滑な改善をみせていた。
だが、症状が軽くなると、途中で漢方薬の服用を中断された。

その数ヵ月後、不眠傾向となり、同時に耳鳴りにみまわれた。

「ボワーン」という耳鳴りで、耳鼻科で聴力低下を指摘されたそうである。
「夜には、なかなか寝付けない。」
困り果てた末の、再度の治療依頼だった。

問診の後、耳鳴りと 自律神経の反応穴(はんのうけつ)を、糸練功(しれんこう)にて確認・分析する。

(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
耳鳴り、自律神経の反応穴

1.3合臓腑病陽証桂枝加竜骨牡蠣湯
3.0合臓腑病陽証釣藤散

症状
耳鳴り(強い)、不眠症状(強い)
耳鳴りが強く、睡眠導入剤を服用しても寝付が悪い


1ヵ月後
耳鳴り、自律神経の反応穴

2.8合臓腑病陽証桂枝加竜骨牡蠣湯
4.2合臓腑病陽証釣藤散

症状
耳鳴り(軽度)、不眠症状(消失)
耳鳴りは軽微、寝付は良好


7ヵ月後
耳鳴り、自律神経の反応穴

8.7合臓腑病陽証桂枝加竜骨牡蠣湯
10.0合臓腑病陽証釣藤散

症状
耳鳴り(完全消失)、不眠症状(完全消失)
耳鳴りは消失し、寝付は良好(睡眠導入剤:不要)
その後、漢方治療を完了する


結語

耳鳴り・不眠症は、ともに自律神経の不調に関連深い症状です。

実際、本症例における耳鳴りの反応穴と、「五志の憂」といわれる自律神経の反応穴は、同じ合数を示していました。
「合数の一致」の意味は、自律神経の働きにリンクする耳鳴りであると推測されます。

以前、更年期障害の治療を中途で止めたため、治りきっていない「釣藤散証(ちょうとうさんしょう)」が 耳鳴り・不眠症の誘因となっているのです。

さて、患者さんの不眠症と耳鳴りには、
「桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)」と、
「釣藤散(ちょうとうさん)」の、
2つの漢方薬が著効しています。

一見、簡単な処方選択と感じるやも知れません・・・。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。

通常の医療現場では、効きそうな薬を一定期間服用して、効けば処方継続。
無効なら、別の候補薬を選びますね。

これが、漢方の世界ではもっと複雑になります。
なぜなら、漢方薬は 患者さんに適合させて効かせます。
適合しない漢方薬は、何の効果もありません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。

どのように適合性を見極めるか・・・
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。

このケースでは、耳鳴りと自律神経の反応穴に 必ず磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を漢方的に分析し、適合処方を誘導する技術が糸練功です。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

薬を服用せずに、薬の適・不適を識別する方法です。
病態の解析後、患者さんへ薬の検体を近づけ、磁場の変化を見つつ適合性を判断します。
(この方法は、手間と時間を要しますので、「予約制」です)

そして、
1.桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)証
2.釣藤散(ちょうとうさん)証
の、適合処方を誘導したのです。

・・・証(しょう)とは、
・・・の漢方薬が適応する治療ポイントを示します。
・・・の漢方薬で治せるお病気のことです。

つまり、相談の段階で「患者さんの症状は、桂枝加竜骨牡蠣湯と、釣藤散 で治せる確証」が得られたわけです。

この方法は、実に画期的です。

なぜなら、薬を服用する以前に有効な漢方薬が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代を省けます。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
漢方が自然治癒力を目覚めさせ、患者さんご自身の細胞が自己修復を始めます。

現実に、患者さんが治っている事実は 漢方薬の適合性の証です。

「患者さんと漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
桂枝加竜骨牡蠣湯散剤9,000円
(税別)
釣藤散散剤9,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります