心臓神経症(動悸・脇痛・不安感)

御婦人の初めての御来談は、10年前・・・憔悴しきった表情が思いだされる。

「いつも心臓が気になって・・・」
「動悸がする・・・」
「胸が痛い、まるで心臓をつかまれているような・・・」

病院で検査をされたが、心臓には異常はなかった。
御婦人は、「心臓神経症」と診断された。

心療内科をすすめられ、抗不安薬が処方されていた。

彼女はとかく自己診断がお好きだった・・・。
何かと自分に病名を付けたがった・・・。

当時の私は、糸練功(しれんこう)という技術を知らなかった。
故に、望診・聞診・問診の情報から「柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)」を選薬した。
同処方にて、一通りの症状は治まった。
しかし、完治に至らぬ途中で、彼女は服薬を止めてしまった・・・。

あれから8年・・・。

「また症状がひどくなった・・・」
「怖い・・・」
「不眠も強いので、またみて欲しい・・・」

との連絡。

問診の後、糸練功(しれんこう)にて、心臓の反応穴(肩甲骨間の左側)と、自律神経の反応穴の確認・解析を行った。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は・・・

●連珠飲(れんじゅいん)証
●四逆散(しぎゃくさん)証
●スクアレン製剤により正常化する証

以上の3証が、治療を要する低い合数で確認された。
「○○証」との表現は、○○という漢方藥に適応する病態(治療ポイント)である。

8年前に、著者が選薬した「柴胡加竜骨牡蠣湯証」も確認された。
ただ、その証は高い合数(症状の安定した状態)にあった。
服用を止めていれば、下がっているはず・・・? なぜ??

問うたら、「安いドラッグストアーで同じものを買って飲んでいた」という。

早速、上記3処方の服用時刻を設定、服用開始する。

1ヵ月後
「眠れます・・・恐怖感もなくなって」
「動悸も、胸の痛みも、軽いです」
と、彼女は嬉しそうに話された。

改善を裏付けるように、3証の合数も上昇していた。
漢方処方が適合している証(あかし)である。

現在
彼女はまじめに服薬を続けている。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

「心臓神経症」 と診断されたご婦人の漢方治療による一例です。

心臓神経症は、精神的要因が大きく関与します。
頻脈や動悸には、「炙甘草湯(しゃかんぞうとう)」の適応が多いものです。
しかし、一概には言い切れません。
実際、彼女には炙甘草湯証は確認されませんでした。

ここで、選薬した
「連珠飲(れんじゅいん)」
「四逆散(しぎゃくさん)」
「スクアレン製剤」
は、精神バランスの乱れを正常化するために、良く適用されます。
いわゆる、漢方の精神安定剤です。

ただ、漢方の世界では「精神安定剤的」な選薬をしません。
最重要は、「患者さんへの適合性」です。

適合しない漢方薬は、何の効きめもありません。

適合性を見抜く・・・
そのために当薬局は、糸練功という技術を活用しています。

糸練功は、画期的な技術です。
1.治療すべき異常がいくつあるのか?(合数の探索)
2.異常を正常化させる漢方処方はなにか?(合数の解析)
それらを、服薬する前に識別する技術です。

すなわち、服薬前に「適合処方を知る」ことに違いありません。
(糸練功に興味のある方は、論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

ここで、大切なアドバイスを1つ。

身体の不調を感じても、

「自己診断をしないこと。」
「自分に病名を付けないこと。」

病名を付けるのは、お医者さんの仕事です。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
連珠飲散薬12,000円
(税別)
四逆散散薬11,000円
(税別)
スクアレン製剤カプセル剤12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります