不妊症(冷え症と月経痛を伴う)

不妊治療を継続される多くの方は、妊娠の期待と共に、重圧も感じておられる。

“是が非でも赤ちゃんを・・・”
期待である思いが、ご自身を疲れさせてしまう。

ところが、肩の力を抜いた時、自然妊娠する方も多い。

本掲載では、そんなケースを報告する。

30歳代のご婦人である。
不妊外来にて、一連の不妊治療を継続されていた。
タイミング法、人工授精、体外受精、そして漢方治療・・・。

御来局当初、採卵後の卵巣の腫れが治まらず、体外受精は中断されていた。
右下腹部(卵巣部)の痛みも続いていた。

彼女はまじめに通院された。
だが、次第に気持が沈みがちになり、抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取込阻害薬)の処方を受けていた。

月経周期は安定しているが、月経痛が非常に激しい。
上肢・下肢の冷えも強く、冬には霜焼けに悩まされていた。

基礎体温表を拝見すると、高温期への移行が遅く、持続性も欲しい(図1)。
病院から、卵管狭窄を指摘されていた。


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(図1)


月経前には、乳房痛、全身の浮腫、頭痛と吐き気が現れる。

なにより、彼女を悩ませたのは、耐え難い月経痛だった。

幾度の体外受精も実を結ばず、御婦人の心身は疲れていた。
「気力がわかない・・・不妊治療よりも、冷え症と生理痛が軽くなれば・・・」
とのご依頼だった。

問診の後、女性ホルモン全般の反応穴(はんのうけつ)、自律神経の反応穴を糸練功(しれんこう)を用いて解析、適合処方を誘導した。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果を以下に記す。

○女性ホルモン全般の反応穴より
●甲字湯加黄芩紅花(こうじとうかおうごんこうか)証・・・(A証)
●当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)証・・・(B証)

○卵管の反応穴より
●六君子湯(りっくんしとう)証・・・(C証)

○自律神経の反応穴より
●四逆散(しぎゃくさん)証・・・(G証)

○第五頸椎の反応より
●桂枝二越婢一湯加苓朮附(けいしにえっぴいちとうかりょうじゅつぶ)証・・・(K証)

以上の5証が、治療を要する低い合数で確認された。
「○○証」と表現しているのは、○○という漢方藥が適応する異常である。

ここで、患者さんの依頼内容は、冷え症と月経痛の改善である。
よって、卵管狭窄の要因と思われる(C証)は省略。

だが、「気力がわかない」等の、うつ症状の要因と思われる(G証)は、治療の必要がある。
幸運なことに、第五頸椎の異常である(K証)の適用により、(G証)が治療可能であることを、糸練功にて確認した。

早速、甲字湯加黄芩紅花(A証)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(B証)、そして桂枝二越婢一湯加苓朮附(K証)にて治療を開始。

・・・0ヵ月後
上肢・下肢の冷え:強い
月経痛:耐え難い
うつ症状:強い(不眠あり)

・・・1ヵ月後
上肢・下肢の冷え:改善中(足が温かい)
月経痛:消失
うつ症状:安定化(不眠なし)

・・・13ヵ月後
上肢・下肢の冷え:消失
月経痛:消失
うつ症状:消失

病院にて、妊娠が確認される(自然妊娠)


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

冷え症と月経痛の漢方治療が、自然妊娠へ繋がったケースです。

治療以前の冷え症状は重度で、下肢を冷やすと下腹部の冷え・痛みも誘発されておられました。
ですが、治療開始から「足が温かくなった」と喜ばれ、月経痛も顕著に改善されました。

また、患者さんは元々ストレートネックで、その上、交通事故による頸椎損傷を受けています。
それが、“気力がでない”等のうつ症状を増幅していたと思われます。
なぜなら、頸椎異常を治すための“桂枝二越婢一湯加苓朮附(K証)”によって、うつ症状の適応である“四逆散(G証)”も改善できたからです。

うつ症状が安定化し、心にゆとりができた頃、患者さんに心境の変化が現れました。
“是が非でも、赤ちゃんを”
ではなく、

“赤ちゃんを授かれたら幸せ”
と思うようになったそうです。

女性ホルモン全般の反応も、自覚症状も安定した10ヵ月後。
“もしや、自然妊娠できるかも”
と、卵管狭窄改善のため、C証の治療を 3ヶ月間 継続。

そして、13ヵ月後に自然妊娠。

その後の経過も、順調です。

糸練功の理論を構築され、御教授賜りました木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)に、衷心より感謝申し上げます。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
甲字湯加黄芩紅花
(代用処方)
錠剤6,000円
(税別)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯散薬9,000円
(税別)
桂枝二越婢一湯加苓朮附
(代用処方)
散薬12,000円
(税別)
六君子湯
(代用処方)
カプセル12,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります

不妊治療の年齢について

不妊治療のご依頼に際して、年齢上の限界があります。
卵子の質・量的な観点から、45歳を過ぎると治療効果は著しく下がります。

そのため、不妊治療のご依頼は、45歳 を上限とさせていただきます。