腰椎すべり症(脱力感・浮腫・知覚異常)

以前、眩暈を漢方治療で克服された御婦人。

眩暈の再発もなく、快適な経過だった。
だが、2年前から下半身の異常を感じていた。

「足が浮腫んで、足裏の感覚がおかしくなった」
「いつも裸足で砂利を踏んでいるよう」

と、症状を語られた。

下肢の脱力感・膝の痛み・腰痛も甚だしかった。

病院による診断名は、「腰椎すべり症(ようついすべりしょう)」である。
さまざまな治療を施してくれたが、改善には至らず・・・。

困った挙句に、ふと目にした新聞広告の○○湯を通販で購入・・・。
すると、「服用後に、足のむくみがもっと酷くなった」と泣きっ面に蜂である。(写真1)


mukumi_00

(写真1)


下肢の脱力感が強く、歩行も困難なため、知人に付き添われて来局された。

腰椎すべり症は、「年だから仕方がない」と済まされてしまう事もある。

しかし、我々はそうは思わない。
患者さんへの「適合処方さえ誘導できれば」治せる疾患である。

適合処方の誘導法・・・。
その方法として、当薬局は糸練功(しれんこう)という技術を活用している。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

問診の後、糸練功にて患部(下肢・腰椎)を確認、適合処方を解析する。

その解析結果を以下に記す。

○患部の反応より
●越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)証(A証)
●防已黄耆湯合桂枝加朮附湯(ぼういおうぎとうごうけいしかじゅつぶとう)証(B証)
●防已黄耆湯合R青皮製剤(ぼういおうぎとうごうRせいひせいざい)証(C証)

「○○証」との表現は、○○という漢方藥が適応する病態(治療ポイント)である。
つまり、御婦人の腰椎すべり症には、上記3処方により治癒できることを意味している。

A証・B証・C証は、いずれも下半身の浮腫(むくみ)と相関性がある。
また、B証・C証は骨粗鬆症(こつそしょうしょう)に現われやすい適応である。
従って、本症例には、骨粗鬆症の関与が大きいと推測される。

養生法を伝えて、漢方治療を開始。

・・・1ヵ月後
御婦人は、ご自身の足でバスを乗り継ぎ、来局された。
膝の痛みは軽減、下肢の脱力感は軽度、歩行は可能になっていた。
腰は朝方に少し痛む程度。
浮腫(むくみ)も減少、足裏の知覚異常の範囲は狭まっていた。

・・・3ヵ月後
膝の痛みは軽く、下肢の脱力感は消失、歩行は良好である。
腰痛は、ほぼ消失。
浮腫(むくみ)もかなり改善されている。(写真2)


mukumi_03

(写真2)


下肢の第一指に、軽度の知覚異常がある程度。
当初の「砂利を踏んでいるような感覚」は、すでに消失。

・・・現在
漢方治療を継続中。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

「下肢浮腫を伴う、腰椎すべり症」への漢方薬による改善症例です。

当初、お悩みだった下肢の浮腫と足裏の知覚異常・・・。
現在では、それらの症状は殆ど消失しています。

下肢浮腫の改善状況を、時系列で示します。

mukumi_00mukumi_03mukumi_04
治療前3ヵ月後4ヵ月後

当薬局には、腰椎すべり症だけでなく、変形性膝関節症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症の方が、多く訪れます。
その半数以上は女性です。

特に、50歳を超えた(閉経後の)女性の方が圧倒的に多いです。

変形性膝関節症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症と病名はさまざまです。
が、閉経後の患者さんには、ある共通性があります。

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)です。

これまでの経験から、骨粗鬆症の患者さんには、「防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)系への適合性を示す」ことが多いのです。

上記の防已黄耆湯合R青皮製剤証(C証)は、骨粗鬆症による急性的な骨損傷の際によく現われます。

また、防已黄耆湯合桂枝加朮附湯証(B証)は、骨損傷が慢性化した患者さんによく見受けられます。

よって、本症例に伴う「下肢の脱力感」や、「足裏の感覚異常」の背景には、骨粗鬆症があると思われます。

そして、その症状が正常化する現象は、適合処方により「痛んだ腰椎を自分自身で治している」ことに他なりません。
生体の自然治癒力は「すごい!」と驚嘆します。

ここで特記したいのは、治る過程の主役は漢方薬ではありません。
漢方薬は、治癒の「起爆剤」であって、治しているのは患者さん自身です。

また、漢方薬は患者さんに適合すれば劇的に効きます。
しかし、不適なら何の効果もありません。

そして、病名は同じでも、患者さん一人ひとりの適合処方は違います。
ですので、我々は病名を聞いただけでは漢方薬を提供しません。
漢方薬のお渡しは、直に患者さんを解析して、有効性を確認してからです。

その有効性の判定に、糸練功は活用されます。
患者さんの患部や、特有の皮膚表面には、異常な情報が現われます。
その情報を漢方的に分類し、適合処方を判定する技術が糸練功です。
(糸練功の詳細は、「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

糸練功の理論を構築され、御教授くださる木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)に深く感謝いたします。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
越婢加朮湯散薬9,000円
(税別)
防已黄耆湯合桂枝加朮附湯散薬27,000円
(税別)
防已黄耆湯合R青皮製剤散薬15,800円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります