70歳代後半 女性

ご婦人は、10年前に 変形性膝関節症 を発症されていた。
8年前に、左膝の手術治療(人工膝関節置換術)を受ける。

変形性膝関節症は、反対側にも・・・そして2年目前、右膝の人工膝関節置換術を受けた。
手術は成功した。

ところが、右下肢(膝から内果にかけて)が、痺(しびれ)るという。
術後、2年経過しても、痺れは強く、右膝の痛みも伴っている。

来局時、両下肢の浮腫(むくみ)は、甚だしかった。

加えて、腰痛(腰椎:4~5番)も伴っていた。
「手術は完璧だった」と医師から伝えられ、懸命にリハビリを続けられたが、右下肢の痺れは好転せず。

この症状は、術後の影響を誘発因子と感じられる方もおられるかも知れない。
だが、変形性膝関節症の背景には、それ以外の「体質的な誘因」があると著者は直感している・・・。

問診の後、糸練功(しれんこう)により、病態と適合処方を解析。
(糸練功の技術的な要項は、「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

その解析結果は・・・

A証) F曲參製剤 + コウシンコウ製剤 + B牡蠣製剤 (陰証)
B証) 防已黄耆湯加減方 (陽証)
以上の2証であった。

変形性膝関節症の病態と、患者さんから解析された適合処方から判断されること。

変形性膝関節症は、加齢とともに関節軟骨が弾力性を失い磨耗する病態。
東洋医学的には、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の治療方法と酷似する。
現に、適合処方は、防已黄耆湯系統とリンクしている。

A証)に、防已黄耆湯の語句がないが、「防已黄耆湯合越婢加朮附湯」でも治療が成立する慢性化した病態(陰証)である。
B証) は、急性的な軟骨損傷への適応(陽証)である。

漢方治療から、3ヵ月後・・・

両下肢の浮腫(むくみ)が軽減し、膝痛・腰痛も好転。
右下肢の痺れも、改善している。

この病態は、経年経過による老化・・・老化現象による変形性膝関節症(関節軟骨の弾力性低下)である。
前述のとおり、本病態は「防已黄耆湯系統」の組み合わせにより症状を軽減できる。

もともと、防已黄耆湯系統の適応は、下半身の浮腫(むくみ)と、骨の弱体化を特徴としている。
閉経期以降の女性なら、誰しも遭遇しえる病態である。
本症例の下肢の痺れ、浮腫、膝関節の痛みは、その結果として誘発した症状である。

しかし、適切な処方選択によって、完治は可能である。