黄斑前膜網膜前黄斑線維症)は、症状が黄斑変性症と似ていますが、異なる疾患です。

坂東隆弘先生(兵庫県・B&O薬局)は、論文「滲出型加齢黄斑変性症の漢方治療の有効性について」の中で、“黄解散系統の有効例”を報告されています。
黄斑前膜も、同じ黄斑部の疾患ですので、漢方治療においても共通項があるように感じていました。
実際、当薬局でも黄斑前膜の患者さんが、黄解散系統で完治された症例を報告しています。
しかし、黄斑前膜の漢方的アプローチは、もっと複雑な背景がありそうです。

ここでは、黄解散系統の適応ではない黄斑前膜の改善例をご紹介します。

患者さんは、40歳代後半(女性)です。

自治体の健康診断で、“黄斑前膜(左眼)の疑い”を指摘され、眼科での精密検査で黄斑前膜と診断されました。
毎日、ご自身で“アムスラーチャート”を使ってチェックをされています。
その見え方は、“中央の四角が丸みを帯びている”そうです。
また、患者さんは10年以上も前から“飛蚊症(両眼)”を発症されています。

漢方治療は、黄斑前膜という病名だけで処方を選びません。
重要なことは、“患者さんご自身に適合する漢方薬を探す”ことです。

そのために、当薬局は糸練功という技術を活用して適合処方を解析しています。
(糸練功の技術的な要項は、専門家向けですが「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

患者さんの両眼の解析結果は、以下のとおりでした。

A証) 連珠飲証 (陰証)
B証) 利水製剤+鯉胆製剤証 (陽証)

早速、漢方治療を開始しました。

・・・4ヵ月後
“黄斑前膜”(アムスラーチャート): “中央の丸み” 少し軽減
“飛蚊症”(視野): “黒い線” 軽減
変動あるも、飛蚊のない時がある(2~7日)

・・・15ヵ月後
“黄斑前膜”(アムスラーチャート): 中央が「正常な四角に見える」
“飛蚊症”(視野): “黒い線” ほぼ消失
先日、“眼科の検査が楽しみ!”と、嬉しそうなお声の報告がありました。

アムスラーチャートの改善を、はっきり自覚するまで、漢方治療の開始から、15ヶ月・・・。
決して容易な道のりではありません。
諦めずに、コツコツと治療を積み上げてきた成果です。

今も、引き続き、漢方治療を継続中です。