現代医学においても、口腔灼熱症候群(Burning mouth syndrome; BMS)の発症メカニズムは、非常に複雑です。
口腔カンジダ症、ドライマウス、舌炎、微量元素の欠乏など、原因が特定できた場合は、個々の治療が行えます。
しかし、“検査をしても原因不明”というケースは、思いのほか多いのが現状です。
当薬局を訪れる、BMSの患者さんも“異常なし”と診断された方がほとんどです。
ところが、患者さんの既往症を伺うと、“頸椎ヘルニア”や、“首こり”といった、頸椎異常にリンクする回答が非常に多いのです。
そこで今回は、過去に頸椎椎間板ヘルニアと診断された方の、口腔灼熱症候群の改善過程を、ご紹介しましょう。
60歳代(女性)の患者さんです。
口腔灼熱症候群の発症は、10年前・・・口唇と口内(全体)の灼熱感、痛みにお悩みでした。
灼熱感は、何かに没頭している間は薄れ、安静時に悪化する傾向がありました。
また、舌痛症のような舌の灼熱感と痛みはありません。
病院による検査では、”口唇、口内に異常はない”といわれ、不安感や不眠をともなうことから抗不安薬、そして、ビタミンB1,B6,B12配合剤が処方されました。
ドライマウスの傾向があったのでしょう・・・漢方薬の「五苓散」を処方されたこともあったそうです。
問診によって得られた情報は、既往症として、頸椎椎間板ヘルニア(頸椎4-5)・・・当時、コルセットによって症状は消失。
しかし、左上肢(左手:第2~3指)の痺れは、時々あり・・・。
当薬局は、糸練功(しれんこう)という技術を用いて、患者さんの病態を漢方的に解析しています。
問診の後、患者さんの愁訴部(口内・口唇)、自律神経の反応穴、第4~5頸椎を確認し、適合処方を誘導しました。
(糸練功の技術的な要項は、専門家向けですが「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)
解析結果は、以下のとおりです。
口内・口唇、および自律神経の反応穴より
A証) 抑肝散加減方証 (陽証)
第4~5頸椎の反応より
B証) F曲參製剤合Bコウシンコウ製剤証 (陰証)
“F曲參製剤合Bコウシンコウ製剤”は、その多くが骨粗鬆症の患者さんに適合性を示します。
この場合、骨粗鬆症を背景とする、頸椎椎間板ヘルニアの存在が推測されます。
相談時、患者さんには頸椎椎間板ヘルニアの症状は、顕著に現れていません。
しかし、”F曲參製剤合Bコウシンコウ製剤”のサンプルが、患者さんの手掌に触れると、一瞬、口内の灼熱感が和らぎます。
そして、更に”抑肝散加減方”のサンプルを置くと、灼熱感は更に軽減しました。
この事象は、患者さんの口腔灼熱症候群は、
1) 完治していない頸椎ヘルニアへの適合処方”F曲參製剤合Bコウシンコウ製剤”
2) 自律神経の不調への適合処方”抑肝散加減方”
上記の2剤によって治療が成立することを意味します。
早速、漢方治療の開始です。
・・・1ヵ月後
口唇・口内の灼熱感 : 減少中
現在も、漢方薬を継続中です。