坐骨神経痛と骨粗鬆症 (腰痛・下肢のしびれ)

60歳代、女性。

平成19年6月、千葉県外より初来局。

10年前(平成9年)より、腰(第4腰椎の右側)~下肢(右脚側面から指先)にかけて 痛みが走り、痺れも感ずるようになったとのこと。

病院にて、「坐骨神経痛」と言われ、定期的に温熱治療が施され、鎮痛剤の処方を受けている。

温熱治療の後は、痛みが軽減し楽になる。
しかし、「夜になると痛みが憎悪し、睡眠が妨げられる」と申される。

御婦人には、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)による腰椎圧迫骨折の既往がある。

問診の後、糸練功(しれんこう)にて、愁訴部の反応を解析。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


治療経過

0ヵ月後
愁訴部(第4腰椎右側~下肢)の反応

0合臓腑病膀胱陰証防已黄耆湯合桂枝加朮附湯
3.0合經絡病膀胱陰証芍薬甘草湯

症状
腰~下肢の痛み・しびれ(激しい)
痛みによる、睡眠障害あり


7ヵ月後
愁訴部(第4腰椎右側~下肢)の反応

6.2合臓腑病膀胱陰証防已黄耆湯合桂枝加朮附湯
9.2合經絡病膀胱陰証芍薬甘草湯

症状
腰~下肢の痛み・しびれ(消失)
腰から下肢への痛み・しびれは、ともに4ヵ月後に消失

現在も、漢方治療を継続中


結語

発症が、10年前にもかかわらず、円滑に治療が進行した坐骨神経痛の改善症例です。
通常、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)による圧迫骨折の既往のある方は、複数(2~3個)の病態(治療ポイント)が確認されます。

また、経年に応じて病態は複雑化するため、治療に要する漢方処方は多くなります。
しかし、御婦人の治療ポイントは、
1.防已黄耆湯合桂枝加朮附湯(ぼういおうぎとうごうけいしかじゅつぶとう)証
2.芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)証
の、2つでした。

上記の「防已黄耆湯合桂枝加朮附湯」は、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)と、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)との2種類の漢方薬を合わせた薬方です。

注意すべきは、防已黄耆湯には朮(じゅつ)という生薬が組み入れられています。
が、必ず「蒼朮(そうじゅつ)」入りの防已黄耆湯を使わなければなりません。

「白朮(びゃくじゅつ)」入りの防已黄耆湯は、このケースには効きません。

また、防已黄耆湯(蒼朮)が適応となる場合、その病態には「骨粗鬆症」が深く関与しています。

実際、糸練功による解析では 防已黄耆湯(蒼朮)を組み込まないと、患者さんの異常反応は消失しませんでした。
このことは、「防已黄耆湯が不可欠である」ことを示しています。

糸練功は、生体への薬の有効性を事前に知る技術です。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

以下は、本症例の坐骨神経痛の改善過程です。
服用開始後 1ヶ月で痛みは半減。
3ヵ月後には日常生活に支障のないレベルにまで回復。

「病態を正確に解析し、適合処方を見極める」
その為に、糸練功という技術は大きな役割を果たしています。

最後に、糸練功の理論を構築された木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ衷心より感謝申し上げます。


必要となった漢方薬の料金

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
防已黄耆湯合桂枝加朮附湯散剤24,000円
(税別)
芍薬甘草湯散剤9,000円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります