骨粗鬆症と腰痛・背部痛

30歳代前半の御婦人が、親御さんとともに来局された。

看護師である彼女は、整形外科より骨密度の低下を指摘された。
骨粗鬆症(こつそしょうしょう)である。

平成23年の初頭、職場で転倒した際に 背中を痛めた(肩甲骨間:左)という。
以来、その痛みは治まらず、両脇へ痛みが放散するようになったため、整形外科を受診。
骨粗鬆症による圧迫骨折と診断された。

背部の痛みは、激しく「痛みのために眠れない日もある」とのこと。

また、既往症の 椎間板ヘルニア(腰椎4-5)による腰痛も甚だしく、看護師としての職務に大きな支障を抱えておられた。

骨粗鬆症は、更年期以降に発症することが多い。
しかし、彼女はまだ30歳代である・・・。
更年期にはほど遠い・・・。
なぜなのか?

その原因は、「食事」にあった。
彼女の職場は、想像を絶する激務らしい・・・食事休憩の暇などない。

仕事の合間に、菓子を口に入れ、空腹感を紛らわす・・・。
そんな状況が何年も続いている・・・。
しかし、「生きがいのある仕事」と申された。

この方の骨粗鬆症に適合する漢方薬は提供できるだろう。
しかし、当方が依頼を受けるにあたって「必要不可欠な条件」があった。
「まともな食事を摂る」ことである。
彼女は、意を決したように肯かれた。

早速、脊椎を糸練功(しれんこう)にて確認し、適合処方を解析する。
異常は脊椎全体に確認された・・・おそらく、骨密度低下の反応であろう。
特に胸椎(6)・腰椎(4-5)に、その異常は強かった。
(糸練功の詳細は、著者の論文「糸練功に関する学会報告」を参照されたい)

解析結果は・・・

● 防已黄耆湯合桂枝加朮附湯(ぼういおうぎとうごうけいしかじゅつぶとう)証
● B牡蠣製剤(Bぼれいせいざい)証

以上の2証を、極めて低い合数で確認した。
「極めて低い合数にある証」とは、症状は激しく、痛みは強烈である。
この状態では、「過酷な看護師の仕事はできない」・・・我慢強い方だと思った。

“○○証”の表現は、○○という漢方薬に適応する病態(治療ポイント)である。
つまり、この方の症状は上記の2処方により、根治可能を意味する。

漢方薬の服用時刻を設定、この日から漢方治療を開始。

1ヵ月後
背部痛・腰痛:ほとんど感じない
「食事は、極力摂るように心がけている」らしい。

4ヵ月後
背部痛・腰痛:消失
「食事はしっかり摂れている・・・
・・・長年、勤めた部署を転属した」と聞かされた。

現在
漢方治療を継続中。


糸練功の指標(合数)
合数の数値は、-1.0~10.0 の範囲で表わされ、
病態の要因である“異常ポイント”を意味します。
※症状が重いほど合数は低く改善と共に上昇します


実践漢方のコメント

骨粗鬆症を原因とする、圧迫骨折(背部痛・腰痛)の改善症例です。

患者さんには、既往症として「腰椎椎間板ヘルニア」があります。
それによる腰痛も、骨粗鬆症が背景にあると思われます。

骨粗鬆症による、背中の痛み・腰痛の発症は、胸椎・腰椎の圧迫骨折から由来することが多く、痛みのために日常の動作が制限されます。

彼女の周囲は「運動不足じゃない?」と言われたこともあったそうです。
もし、言われるまま「運動の負荷」をかけたら、大変なことになっていたでしょう。
新たな圧迫骨折を誘発するからです。

ある意味、「整形外科で、骨粗鬆症を指摘されたこと」は不幸中の幸いです。

さて、この報告が「簡単な漢方治療」と思わせるやも知れません。
ですが、我々は闇雲に漢方薬を選んでいません。

漢方薬は 患者さんに合わせて効かせるものです。
適合しない漢方薬は、何の効きめもありません。
漢方治療の命は、患者さんと薬の適合性を見抜くことなのです。

適合性の見極め方・・・。
その方法として、当薬局は 糸練功(しれんこう)という技術を応用しています。

骨粗鬆症によって痛みを発している患部には、磁場の乱れ(情報)が生じています。
その情報を、漢方的に分析する技術が糸練功です。

服薬前(相談時)に、薬の適・不適を識別する方法です。
(糸練功に興味のある方は、「糸練功に関する学会報告」をどうぞ)

そして、

1.防已黄耆湯合桂枝加朮附湯証
2.B牡蠣製剤証

という、適合処方を導いたのです。

・・・証(しょう)とは、・・・の漢方薬が適応する病態です。
・・・の漢方薬で治せるお病気のことです。

つまり、相談の過程で
「この症状は、防已黄耆湯合桂枝加朮附湯 と B牡蠣製剤で治せる確証」
が得られたことになります。

この方法は、実に画期的です。
なぜなら、薬を服用する以前に有効な漢方薬が判ります。
ですから、無駄な治療・無駄な時間・無駄な薬代が省けます。

適合処方が解れば、後は漢方薬を服用するだけ・・・。
自然治癒力が目覚め、患者さんご自身の細胞が自己修復を始めます。

現実に、患者さんが治っている事実は、漢方薬が適合していることの証明でもあります。

「患者さんと、漢方薬の適合性を見極めた漢方治療」
糸練功は、それを実践するための技術です。

糸練功の理論を構築され、御教授いただいた 木下順一朗先生(福岡県・太陽堂漢薬局)へ感謝の念に堪えません。


治療に要した漢方薬と費用

漢方薬漢方薬の種類料金(30日分)
防已黄耆湯合桂枝加朮附湯散剤18,000円
(税別)
B牡蠣製剤散剤5,200円
(税別)

※ 適合する漢方処方は、個々の患者様により異なります